[原子力産業新聞] 2008年6月12日 第2432号 <3面>

欧州復興銀行 「石棺」修復で 1億3,500万ユーロ拠出

欧州復興開発銀行(EBRD)は5月19日、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所サイトを浄化するための国際協力に、2007年の収益の中から1億3,500万ユーロ(約2億1,200万米ドル)を拠出することになったと発表した。

チェルノブイリ・サイトの安全性向上に関してEBRDはすでに昨年9月、同行が管理する基金を使って2つの重要な契約が締結されたことを明らかにしていた。

1つは事故を起こした4号機の石棺上部を鋼製の構造物で覆う「新規安全封じ込め施設(NSC)」を建設するためのもので、もう片方は、1号機〜3号機の使用済み燃料を保管する「中間貯蔵施設2」の完成に関わるもの。

昨年6月にドイツで開催されたハイリゲンダム・サミットではG8各国がチェルノブイリ・サイトの更なる安全性向上のために努力していくことを再確認する一方、資金面での協力が進んでおらず、EBRDは今回の寄付金でチェルノブイリ関連の資金協力に新たな推進力を与える狙いがあったとしている。

NSCは敷地内で組み立てた後、レールを使って原子炉上部に滑らせることになるが、縦257メートル×横150メートル、高さは105メートルと、この種の構造物としては最も大型の部類に入るという。100年程度の耐久性を持たせるほか、最終的に解体した時のことを考慮してクレーンを装備することになるとしている。建設資金については、EBRDが原子力安全とデコミ関係で管理運営している6つの基金の中の1つ、「チェルノブイリ・シェルター基金(CSF)」から賄う予定。使用済み燃料中間貯蔵施設の方は「原子力安全口座」から支出しているとEBRDでは説明している。

NSCの建設は現在、準備作業が進行中で、施設の基礎工事に欠かせない掘削等の作業についての契約を取り交わしているところ。

設計と技術的な詳細に関しては、NSCおよび使用済み燃料貯蔵施設の両方について作業が進んでいるとしており、最終設計は2009年の春にウクライナの規制当局に提出する計画であることを明らかにしている。

CSFには、原子力発電施設を持たない欧州の国を含めて、日本や米国など23か国・1機関が出資している。


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