[原子力産業新聞] 2008年6月19日 第2433号 <1面>

原子力比率の増加も盛込む 温暖化問題懇 福田首相に提言を提出

政府の地球温暖化問題に関する懇談会(座長=奥田碩・内閣特別顧問)は、16日の会合で提言「『低炭素社会・日本』をめざして」を取りまとめ、福田康夫首相に提出した。日本は2050年までに、温室効果ガス排出量を現状から60〜80%の削減を目指すべきとし、その対策としてエネルギー供給分野では、原子力を第一に取り上げ、「設備利用率の向上や発電電力量に占める比率の増加および新技術の開発を進めなければならない」とした。

提言は、(1)50年に世界全体で排出量半減など世界が共有すべきもの(2)60〜80%削減など日本の決意(3)広く国民レベルで応分の負担が必要など低炭素社会づくりに向けた基本的考え方(4)技術・エネルギー・資金・社会のイノベーションによる低炭素社会の実現(5)国民の意識改革と政治の責任――などで構成。

エネルギー・イノベーションでは、革新的な創り方と使い方が不可欠とし、創り方の第一に、原子力発電を取り上げた。「最小費用で低炭素エネルギーを安定的に供給できる」とし、「今後も低炭素エネルギーの中核として、徹底した安全確保を大前提に、設備利用率の向上、発電電力量に占める比率の増加、新技術の開発などを進めなければならない」とした。併せて、「途上国でも積極的に原子力発電を導入する国際的な動きに対し、日本の優れた安全技術を提供し、核不拡散に対する厳格な姿勢を伝えていくことは、日本に期待されている重要な役割」とし、原子力発電における日本の国際貢献の重要性も強調した。

再生可能エネルギーは、長期的に基幹エネルギーの一角になることが日本の低炭素社会実現の鍵で、政策誘導の一層の強化を提起。排出量取引は、「社会のイノベーションの中で欧米の動向を注視しつつ、試行的実施を通じ、我が国の実情を踏まえて検討」とした。


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