[原子力産業新聞] 2008年6月26日 第2434号 <4面>

IAEA 「国際耐震安全センター」設立を 世界の知見・教訓を柏崎から発信

国際原子力機関(IAEA)は、6月19〜21日、大地震から得られた教訓をもとに原子力発電所の耐震安全性について意見交換する国際ワークショップを柏崎市民プラザで開催した。本WSには、日本を含め30か国から約180名の専門家が集まり、中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原子力発電所への影響に限定せず、より広い観点から、地震による原子力発電所への影響について、これまで全世界で得られた知見や教訓をもとに、技術的な議論を行った。

開会挨拶で、主催者を代表し、A.ゴドイ氏(=写真、IAEA原子力施設安全部)は、「世界最大規模の柏崎刈羽原子力発電所に、地震後、専門家ミッションを派遣し、安全性に大きな影響を与えたダメージがなかったことを確認した」と述べ、その耐震性について高く評価したほか、「教訓として、日本で学んだことを世界に、世界で学んだことを日本に。IAEAは国際的な検討を果たす機関として、世界で関心が集まる耐震性について、今までに得た経験や最新の知見を多く伝えていく」と強調した。

IAEAでは今後、新規に建設される原子力発電所の立地に際して、本WSで議論した安全規制・基準に関する内容を参考として、IAEAの耐震安全指針に反映していく予定。

引き続き、鈴木篤之・原子力安全委員長から、「中越沖地震には地震波の大きさや伝播経路など地域的特性があり、専門家の活発な議論によって実り多い成果を期待したい」と挨拶があった。また、薦田康久・原子力安全・保安院長は、「2回のIAEAミッションの派遣では、中立的な立場で意見をいただいた。本WSの内容も全世界へ情報公開したい」と積極的な意見交換を期待した。

各セッションでは「日本での最近の地震現象」、「IAEAメンバー国による地震動評価の方法と最近の適用」、「原子力発電所の耐震設計」、「既存原子力発電所の耐震安全性(評価、改良、地震後の事業者の取り組み)」、「座談会:最近の大きな事象からの教訓を踏まえた規制活動」をテーマとして、発表および意見交換が行われた。

その中で、ゴドイ氏は、「IAEAでは今後、安全基準の更新に着手するとともに、『国際耐震安全センター』を設立する構想がある」などと、世界的な耐震安全強化への意気込みを示した。

WS初日に行われたレセプションには、泉田裕彦・新潟県知事、会田洋・柏崎市長、品田宏夫・刈羽村長も来賓として参加した。


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