[原子力産業新聞] 2008年7月3日 第2435号 <2面>

深さ6kmの海底地下構造 保安院 柏崎沖、独自に調査

原子力安全・保安院は6月27日、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性について、厳格な検証を行うため新潟県中越沖で同院が実施した海上音波探査の暫定成果に関する中間報告を、総合エネ調の審議会の作業部会で報告した。

同中間報告の説明では、これまで東京電力などが実施した調査では、深さ2〜3km程度のところまでしか沿岸域の地下構造を確認することができなかったが、同院の調査によって、深さ5〜6km程度までの地下構造を明らかにすることができ、沿岸域が伏在逆断層をともなう背斜構造であることが示された。

今回の原子力安全・保安院の中間報告は、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の耐震・構造設計小委員会地震・津波、地質・地盤合同ワーキンググループ(主査代理=纐纈一起・東京大学地震研究所教授)の第12回目会合で説明したもの。

同院からの説明の中では、今回実施した2次元による海上音波探査の測線間隔は、約150〜300mと細かく設定し、調査を実施したため、2次元の探査でありながら、解析においては、あたかも3次元の探査のような立体表示が可能であり、当初計画していた同沿岸沖における3次元の追加調査は不要であるとの説明があった。

同院では今後、海上音波探査による2次元の結果を立体表示し、地質構造や断層の詳細な解釈を行い、震源付近の地質構造などを空間的に把握する方針。また、既存調査においてまだ確認されていないF―B褶曲群の北方海域で、耐震安全性の妥当性をさらに確認するため、追加の探査測線を設定し調査する計画も示された。

今回の海上音波探査(2次元探査)は、2008年2月16日から3月3日にかけて、新潟県中越沖の柏崎刈羽原子力発電所周辺海域において、経済産業省資源エネルギー庁が所有する3次元物理探査船「資源」(総トン数1万トン、全長86.2m、幅39.6m)を用いて、合計22の探査測線(測線総延長約371km)で調査を行った。

作業部会での審議では、処理の妥当性を判断するために、地層の傾斜方向の断面、構造に直行する断面を取得してほしいとの意見があり、原子力安全・保安院から後日、詳細に報告すると回答があった。

〈海上音波探査法〉 調査船に曳航されたエアガンとよばれる震源装置に、高圧空気を送り込み、海水中で間欠的に開放させ、高圧空気が急激に膨張する時に発生する周波数の低い音波(5〜300ヘルツ程度)が、海底や海底下の地層境界から反射してくる音波を、同じく曳航したストリーマーケーブル(ハイドロフォンともよばれ、一定間隔に受振器が複数備え付けられた海上探査用ケーブル)で受振し、この音波を記録、解析・処理をすることによって反射断面を作成し、走時、速度、振幅や波形変化などを解明することで、海底下の地質構造を探査する物理的な手法。


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