[原子力産業新聞] 2008年7月3日 第2435号 <3面>

米大統領候補の原子力政策 マケイン積極推進 オバマ条件付容認

米国では今年11月に大統領選挙を控え、現政権の共和党は第44代アメリカ合衆国大統領の指名候補者を、3月に早々にJ.マケイン上院議員(アリゾナ州選出)に決定した。民主党でも、B.オバマ上院議員(イリノイ州選出)がH.クリントン上院議員との混戦の末、6月3日の予備選挙最終日で党の指名を獲得。ここで今一度、共和・民主両候補者の原子力政策を比較した。

共和党のマケイン候補はブッシュ現政権と同じく積極的な原子力推進派。予備選挙中の2007年4月に行ったエネルギー政策に関する演説の中では、温暖化防止対策に絡めて次のように発言している。

「原子力発電所が米国に建設されてから25年以上が経過しているが、原子力エネルギーの障壁となっているのは技術的な理由ではなく政治的なものと言える。30年前の恐怖に取り付かれたまま、使用済み燃料の貯蔵について延々と政治的な論争を続けていれば、安全でクリーンなエネルギー源である原子力発電所を1基新設することさえ難しいだろう」

新規原子力発電所の建設については、今年6月18日にミズーリ州で行ったスピーチの中で、「私が大統領となった暁には、2030年までに新たに45基を建設できるよう合衆国を牽引し、究極的な目標としては100基の新規原子炉でこの国の家庭や工場に電力を供給したい」との抱負を明らかにしている。

また、使用済み燃料の処分に関しては昨年4月、「安全な貯蔵場所となる州や地元自治体には、技術の進展によって使用済み燃料が価値ある商品となった際、経済的な恩恵に浴せるよう、所有権者としての利益を与えるべきだ」と述べ、回収可能貯蔵支持の立場を示した。

一方、民主党のオバマ候補は、自身のウェブサイトでエネルギー政策の課題として挙げた(1)地球温暖化防止(2)輸入原油への依存軽減、に対して、具体的な対策項目に原子力を含めていない。ただし、「クリーン・エネルギー経済への投資」の中に1項目を設け、「原子力発電は温室効果ガスを出さずに発電した電力の7割以上を占めており、原子力を排除して積極的な温暖化防止目標を達成することは難しいだろう」と記述。現実的な受け止め方も示している。

しかし、これに続けて、「国民の知る権利、核燃料と廃棄物の安全保障、放射性廃棄物の貯蔵、核不拡散、という課題への取り組みが大前提であり、それなくして原子力の拡大はありえない」とも記述しており、「条件付き容認」の立場であることを表明している。

使用済み燃料に関してはまず、環境問題に対する政策の中で、「自分は、国内の原子力発電所からの使用済み燃料棒の追跡管理を原子力規制委員会に義務付ける法案を05年に上院で提案した」との実績を明記。エネルギー政策の中でも、「現在、発電所敷地内に保管されている廃棄物が最先端技術を採用した乾式キャスクに確実に封入されるよう基準を策定したい」との考えを表明している。ユッカマウンテンの処分場については「選択肢たり得えない」と断言。「連邦政府はこれまで処分場計画に数十億ドルを投入してきたが、廃棄物がそこで安全に貯蔵できるか否かは大いに疑問」との見解を示している。


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