[原子力産業新聞] 2008年7月10日 第2436号 <2面>

アジア諸国交え議論 原子力機構等 核不拡散両立で

日本原子力研究開発機構と東京大学グローバルCOEは6月24、25日、アジア地域の原子力平和利用の推進と核不拡散との両立を考える国際フォーラムを都内で開催、原子力発電導入計画を持つベトナム、インドネシア、タイも参加し、今後の協力のあり方について討論した(=写真)。

基調講演で、田中明彦・東大情報学環教授は、70年代までの戦争の続いた歴史が終わり、比較的に平和の状態が続いていることがアジア地域の経済を発展させ、エネルギー需要を伸ばしているとする一方、北朝鮮、イランの核開発などを深刻な状況ととらえ、「核兵器、放射性物質がテロリストに渡ることは何としても防がねばならない」と述べたほか、相次ぐ大地震、風水害から「原子力施設を自然災害からも守らねばならない」などと、原子力開発に際しての課題を指摘した。

新興国ではベトナムより、レ・ヴァン・ホン原子力委員会副委員長が、年8%の経済成長と、それに伴う17%以上の電力需要増から、原子力導入に対し積極的な政府の姿勢を述べ、初号機を19〜20年、第2サイトも21年頃に運開させ、30年には原子力発電規模を800万kW、国内電力設備容量の7.5%にする見通しを示した上で、その実現に向け人材確保の必要などを強調した。インドネシアのカリヨノ原子力庁副長官も、スマトラ、カリマンタン、スラウェシを結ぶ電力網の強化に向け、原子力発電を17年にも導入する考えを述べた。

これら新規導入計画に対し、IAEAのM.アパロ東京事務所長が、「Safety」、「Security」、「Safeguard」の「3S」の重要性と、中でも安全確保はその国の責任で担う必要性を強調した。

パネル討議では、モデレーターの町末男・アジア原子力協力フォーラム(FNCA)コーディネーターが、すでに原子力発電を行っている中国、インドでエネルギー需要増のみならず、CO排出削減からも、将来的に原子力規模を拡大しつつある現状とともに、豪州、バングラデシュ、マレーシア、フィリピン、イタリア、バーレーンも原子力に関心を示しているなどと、世界的な原子力志向を述べた。これら新興国の躍進に対し、石塚昶雄・原産協会常務理事は、開発のステップに応じた先進諸国の協力を、田中知・東京大学原子力工学系研究科教授は、長期的スパンに立った人材育成の必要に関してそれぞれ意見を述べた。


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