[原子力産業新聞] 2008年7月10日 第2436号 <4面>

先端加速器協議会が発足 ILC焦点に 技術検討や広報活動

最先端量子加速器の開発推進を目的に、約50の企業と約30の大学・研究機関等が参加し「先端加速器科学技術推進協議会」(会長=西岡喬・三菱重工業相談役)が先月、発足(=写真)した。

当面、国際リニアコライダー(ILC)計画を中核のモデルケースに技術、広報、知財の3つの部会を設置、外部有識者も交えILCに必要な材料、超伝導、加速器、冷却など様々な技術開発の方向性やこうした技術の波及効果などを検討する。「先端加速器技術の可能性や開発の意義について広く国民の理解を得られるよう、シンポジウムなどの広報活動も積極的に行う」(有馬雅人・協議会事務局長=写真)方針。

協議会の設立は今年に入って具体化した。ILCの日本誘致を目指し、2年前に発足したリニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟会長の与謝野馨・衆議院議員、小柴昌俊・東大特別栄誉教授、鈴木厚人・高エネルギー加速器研究機構長らが、「日本誘致のためには、技術レベルの向上や国民理解が不可欠で、政・官・産・学の連携役となる組織が必要」と、産業界などに働きかけた。三菱重工業、東芝、日立製作所、三菱電機、高エネ研の5者が発起人となり、約80社・機関が参加した。協議会の最高顧問を与謝野議員、名誉会長を小柴教授が務める。

協議会が中核モデルケースとするILCは、現在のところ日米欧が参加し2014年サイト決定、16年建設開始、20年稼動の予定。片側約15km(全長約30km)の主加速器は、それぞれ電子と陽電子を250GeVまで加速、中央部で両ビームを衝突させ新粒子を検出する。

総事業費は約8,000億円、誘致国が約50%を負担する。

ILCで特に期待されるのは、現在の素粒子標準模型において唯一未確認であり、物質の質量起源とされるヒッグス粒子の解明。粒子の存在自体は、欧州共同原子核研究機構(CERN)がスイスで建設を進め、今年稼動予定の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が達成する見通しだが、LHCは陽子同士を衝突させるため、多くの素粒子が発生し、ヒッグス粒子の寿命、質量などを正確に測定することは難しいとされる。「ヒッグス粒子の生成とそれ以外のバックグランドとの分離が容易なILCへの期待は極めて高い」(同)という。


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