[原子力産業新聞] 2008年7月24日 第2438号 <3面>

米エネ省・情報局 「世界エネルギー見通し」で 長期の消費量、50%増

米エネルギー省・エネルギー情報局(DOE・EIA)は6月25日、2005年から2030年までを対象期間とした「2008年版世界エネルギー見通し(IEO 2008)」を発表した。

それによると、世界のエネルギー消費量は基準ケースで2005年の462QBtuから2030年には695QBtuと、50%増加すると予想している。消費量の拡大が特に急速なのは非OECD諸国で、この期間の著しい経済成長や人口の増加などにより85%の伸びが見込まれると予測。一方、OECD諸国のエネルギー消費は19%の伸びにとどまるとしている。

原子力による発電電力量に関しては、IEOは2005年の2兆6,000億kWhから2030年には3兆8,000億kWhに拡大すると指摘した。理由としては、化石燃料価格の上昇やエネルギーの供給保証、温室効果ガス排出への懸念が新規原子力設備の開発を後押しすると説明している。また、多くの既存設備で高い設備利用率の達成が報告されていることから、OECD諸国およびユーラシア大陸の非OECD諸国では古い原子炉の運転寿命延長も期待されると指摘している。

一方、将来の原子力発電拡大を減速させる要因としてIEOは、原子炉の安全性や放射性廃棄物の処分問題、および核兵器の拡散などを列挙。これらは多くの国で国民の不安原因であり続け、新規原子炉の開発を妨げる可能性があると強調した。また、いくつかの国では原子力の高額な資本費や運転維持費が原子力開発利用計画の拡大を阻むかもしれないと指摘した。それでも、IEO 2008は基準ケースで世界の原子力発電の見通しは改善されてきているとの認識を示しており、2025年の発電量についても5年前に刊行された2003年版の予測より31%、上方修正されている点に言及した。

世界の原子力発電設備容量については、IEOは2005年時点の3億7,400万kWから2030年には4億9,800万kWに増加すると計算している。容量の減少が予想されるのは欧州のいくつかのOECD諸国だけとの見方を示しており、具体的にはドイツやベルギーなど原子力からの段階的な撤退を計画している国や老朽化した既存炉が寿命を迎えてもリプレースしない方針である国を挙げている。

地域別では、アジアの非OECD諸国における原子力発電の拡大が最も著しいと予測しており、2005年〜2030年までにアジアの非OECD諸国で新たに設置されるであろう6,800万kWの設備のうち、4,500万kWが中国で、1,700万kWがインドに設置されるとの見方を明らかにした。アジア以外の非OECD諸国では、ロシアが最大の伸びを示すとしており、中期的な予測で見ても1,800万kWの新規設備増強が見込まれるとの予想を明らかにしている。


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