[原子力産業新聞] 2008年7月24日 第2438号 <4面>

放射性廃棄物を大幅低減 新コンクリ開発 原子力機構と熊谷組

日本原子力研究開発機構と熊谷組はこのほど、中性子を高い効率で遮へいし、放射性廃棄物を大幅に削減できる低コストのコンクリート壁構造体を共同開発した。2層の低放射化コンクリートと1層の普通コンクリートの3層構造を採用し、従来のボロン含有低放射化コンクリートの単一構造に比べ、製作費を半分以下に低減できるとしている。

開発した壁構造体は、中性子線源側から順に、(1)セメントの成分や骨材を工夫した低放射化コンクリート層(2)ボロン含有の同コンクリート層(3)普通コンクリート層――の3層構造。1層目で高速中性子を減速させ、2層目のボロンが中性子を効率的に吸収する。

原子力施設のコンクリート壁は、普通コンクリート単一の場合、建設コストは低いものの、解体時に放射性廃棄物となるコンクリート量が多大になる。低放射化コンクリート単一の場合は建設コストがやや高く、放射性廃棄物がかなり低減できる。またボロン含有低放射化コンクリート単一の場合は、建設コストが高く同廃棄物は少ない。

今回の新構造体は、建設コストを抑えながら同廃棄物を1、2層目だけとして削減する。中性子遮へい能力は、ボロン含有単一に比べ劣るが、普通や低放射化単一に比べ優れるという。実際の工事では両低放射化コンクリートを型枠として兼用し、生産性を高める。

遮へい性能を同等とした場合、ボロン含有単一構造とした場合に比べ製作費を2分の1から3分の1に、また普通単一構造とした場合に比べ放射性廃棄物量を約3分の1に低減できる。


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