[原子力産業新聞] 2008年7月31日 第2439号 <1面>

低炭素社会への行動計画 閣議決定 原子力は推進や国際貢献を明記 利用率向上の環境整備進める

政府は29日、先月の福田ビジョンや地球温暖化問題懇談会の提言を基に、我が国が低炭素社会に移行するための具体的な施策や目標を示した「低炭素社会づくり行動計画」を閣議決定した。原子力は、「原子力の推進」として設備利用率の向上、発電比率の相当程度の増加、FBRサイクルの早期実用化などとともに、「原子力発電の優れた安全技術や知見の世界への提供」として、3S(核不拡散、原子力安全、核セキュリティ)を前提に国際社会への貢献を盛り込んだ。

行動計画は我が国の削減目標、革新的技術開発と既存先進技術の普及、国全体を低炭素化に動かす仕組み、地方・国民の取組みの支援で構成。

既存先進技術の普及は、太陽光発電の大幅拡大、「ゼロ・エミッション電源」比率の50%以上への引上げ、原子力の推進、原子力発電の優れた安全技術や知見の世界への提供など9項目。

原子力推進の基本方針に、「安全対策の充実を絶対的な前提に、欧米主要国並みの設備利用率の向上を目指す電気事業者の取組みに資する所要の環境整備を進める」と明記するとともに、新増設の着実な推進、核燃料サイクルの確立やFBRサイクル技術開発の推進を挙げた。このため今年度は電気事業者の電力供給計画へのフォローアップ、次世代軽水炉の開発、「もんじゅ」の運転再開、高レベル放射性廃棄物処分事業の推進、振動診断など新技術を用いた原子力発電所の保全活動の充実などに取り組む。

安全技術や知見の世界への提供の基本方針は、「原子力発電導入・拡大国に対し、多数国間や二国間の枠組みを通じ、3S確保を含む基盤整備等に対する支援や国際協力を推進し、資機材移転の枠組み作りや政府系金融機関の活用などに取組み、日本の原子力産業の国際展開を支援する」。このため今年度はインドネシア、ベトナム、カザフスタンに対する基盤整備協力、IAEAへの拠出金を通じた新規導入国向け基盤整備支援の開始、原子力関連機器などを対象とする地球環境貿易保険制度の創設などを進める。

一方、革新的技術開発では今年5月の総合科学技術会議による「環境エネルギー技術革新計画」や同3月の経済産業省による「クールアース―エネルギー革新技術計画」に取組む。併せて洞爺湖サミットの首脳宣言に盛込まれた「環境エネルギー国際協力パートナーシップ」の核となる国際的に共有できる革新エネルギー技術開発のロードマップは、2010年度の策定を目指し、IEAなどと連携し、今年度中に新たに技術開発施策情報の共有のための作業を開始する。

我が国の温室効果ガス排出目標は、2050年までに現状から60〜80%の削減を掲げており、次期枠組みにおける総量目標は来年のしかるべき時期に発表するとしている。政府は行動計画の取組み状況を定期的にフォローアップする。


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