[原子力産業新聞] 2008年7月31日 第2439号 <3面>

米商工会議所 次期政権宛て公開書簡で 原子力含むエネ戦略綱領公表

米商工会議所のエネルギー問題支部である「21世紀のエネルギー研究所」は17日、来年から米国の政権を担う第44代・大統領および第111議会・議員に宛てた公開書簡を発表し、原子力の利用拡大を含む13項目の新しい長期戦略的なエネルギー政策綱領を明らかにした。

商工会議所は、米国を安全で確実かつ豊富なエネルギーに支えられた未来に導くためにこの書簡を作成したと説明。R.アーミテージ元副国務長官やH.キッシンジャー元国家安全保障補佐官、C.パウェル元国務長官を始め、米国社会で強い影響力を持つ25名の著名人が賛同者として名を連ねており、賛同する一般市民にも同様に署名するよう求めている。

書簡ではまず、米国が今や、長期的なエネルギー危機に直面している点に注意を喚起。長期的な共通ビジョンを有し米国のリーダーシップに最大の注意を払った戦略的なエネルギー政策の策定と実行を最優先事項にすべきだと強く勧告している。米国は天然資源や技術革新の能力に恵まれた国だが、2030年までには世界レベルでエネルギー需要が50%以上増大すると予想されることから、戦略的なエネルギー計画を策定し、確実にこのような需要に対処していかねばならないと警告。そのための行動は、将来の世代の保障と繁栄のためにも今、取らねばならないのだと指摘している。

次に、地球環境に配慮しつつエネルギー供給を保証していくには大統領および議会のリーダーシップの元に努力するに止まらず、官民が連携してその努力を今後数十年間にわたり続けていく必要があると訴えている。

具体的には、燃料や電力に関する情報を集め、事実と健全な科学に基づいた判断を下し、責任を共有すべきであると指摘。産業界は税金や補助金に頼るのではなく、オープンで競争力のある市場にこそ自分達の力が存在することを認識する必要があると断言している。また、政府が資本投資や市場改革を加速することによって新たなエネルギー技術の開発と実証、商業化が進展すると強調。とりわけ、党派を超えて力を結集していく必要があるとしている。

エネルギーに関する13項目の基本的な綱領は、書簡の後半に続けて記載されている。商工会議所はこれらによって、政策責任者達は国内エネルギーの活性化を促進し、環境を保全するとともに、雇用と産業と技術を創出して、国の将来のエネルギー供給に新しい道筋をつけることが出来ると指摘。そのためにも国民の注目を必要とする時期にいると説明している。

13項目のうち原子力関連の項目ではまず、「過去30年以上にわたって新規の原子炉を1基も建設していないにも拘わらず、原子力は米国の電力需要の20%を賄っている上、COも排出しない」という事実に言及。新たな原子力施設の拡大はCOの排出を抑えつつ電力需要の拡大に対応していくために重要だと断言している。その上で、「連邦政府は新規原子炉の建設に対して認められた財政支援を提供しなくてはならない」と強調。自分達の側でも「放射性廃棄物の処分という長期にわたる問題の解決が必要であり、使用済み燃料をリサイクルするために積極的に努力していく必要がある」と指摘している。

そのほかの項目としては、先進的クリーン・エネルギー技術の研究開発、国内原油や天然ガスの探査と生産拡大、過度に重圧のかかる規制の緩和−−などが含まれている。


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