[原子力産業新聞] 2008年8月7日 第2440号 <1面>

対印保障措置協定 IAEA理事会が承認 米印原子力協定、さらに一歩前進 全会一致で 現実路線の重要性を強調

国際原子力機関(IAEA)の理事会は1日、インドの民生用原子力施設に対するIAEAの保障措置適用を求める協定案を日本を含む全会一致で承認した。米印原子力平和利用協力協定実現に向けた条件の1つがクリアされたことになり、インドは今後、原子力供給国グループ(NSG)による承認獲得に臨むほか、米議会での二国間協定承認を待つことになる。

IAEAのM.エルバラダイ事務局長の演説によると、22ページにわたるこの枠組み案は「アンブレラ協定」の役割を担うもので、今後インドが平和利用目的に使用していると申告する核物質および原子力施設についてのみ、IAEAの確証を求めた内容となっている。協定のタイプとしては、インドが国内原子炉のうち6基について1971年〜94年までの間受け入れてきた「INFCIRC/66タイプ」と同じもので、すべての原子力施設を対象とした包括的(フル・スコープ)保障措置協定ではない。同事務局長は、「従来の6基を含めたインドの原子炉全14基について、2014年まで保障措置が適用されるよう、2009年から新たな保障措置協定の実施を開始するつもりだ」と明言している。

同協定案の採択は今回、1日の理事会審議のみで決した形だが、IAEAとインドが同協定案に関する交渉を開始したのは2007年11月のこと。両者は以後数回にわたって協議を重ねており、今年3月には草案文書の内容がほぼ固まり、原則合意。7月には案文が理事国35か国に配布されていた。今後は、インド側で国内の関連法規および憲法上の必要条件をクリアし次第、発効することになる。同事務局長はまた、両者がすでに協定の追加議定書の協議に入っていることを明らかにしている。

今回の協定の内容については、査察対象となる民生用原子力施設と軍事用施設の区別はインド政府が行うという内容になっているほか、原子炉用核燃料の供給が途絶した場合は是正措置を取ることが明記されるなど、インドを特例化した協定と評価する声も高い。

しかしエルバラダイ事務局長は、「これまで私が常に訴え続けてきたように、核兵器のない世界に向けて核不拡散体制を強化するのであれば、全世界を巻き込んだ話し合いは必須であり、NPTに入っていないインド、パキスタン、イスラエルの3国を外すことはできない」と強調。インドが国内の輸出規制関連法をNSGの規制と適合させようとしている点に言及し、「核物質を不逞の輩に渡さないという我々の第一義的な目標のためには非常に重要なことだ」と述べて、その意義を訴えた。


Copyright (C) 2008 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.