[原子力産業新聞] 2008年8月21日 第2441号 <2面>

原子力への不安解消でシンポ シニアネット主催

原子力学会シニアネットワークは8日、「原子力に対する不安とは?それにどう対処するのか」と題する第9回シンポジウムを東京大学で開催。会場には原子力関係者を中心に約170名が参加した。

午前の部では、東洋大学の中村巧教授が「原子力と日本人の安心観」というテーマで講演。原子力関係者と住民の意識調査等に基づく分析を紹介した。原子力に対する不安は、根底では人々の世界観や人生観などとも関係しておりロハス志向(健康や地球環境優先)や、スピリチュアル志向なども相関性がある。原子力の必要性は理解されているが、危険性の認識は原子力関係者と住民とでは異なっていることなどを紹介した。

石川迪夫・前原技協理事長は「原子力不安の正体――トラブル事例の分析から」と題して、新潟県中越沖地震被災時の柏崎刈羽原子力発電所や、JCO事故時の報道を例に、原子力に対する不信や不安の根源はマスコミ報道と行政の責任で、これを改めるには日本古来の「和」にあるのではないかと講演。引き続き金氏顕シニアネット代表幹事から開催団体の活動内容と問題意識について紹介があった。

午後は、「放射線と地震に関する国民の不安にどう対処するか」というテーマで、林勉氏(エネルギー問題について発言する会代表)を座長に、碧海酉癸氏(消費生活アドバイザー)、新野良子氏(柏崎市民)、落合兼寛氏(元日立技術者)、東嶋和子氏(ジャーナリスト)、武藤栄氏(東京電力常務)の5名のパネリストが、放射線や地震に関する一般の方々の不安について、日ごろの経験を背景にそれぞれの立場から解消策などについて2時間の討議を行った後、会場参加者との質疑応答も2時間行われた。

最後に林座長から、原子力の健全な推進はわが国にとって必須であり、そのためには原子力関係者が狭いムラから脱却して、原子力を広範な社会システムとして認知してもらうための活動を行う必要がある。社会システムとしての原子力を考える場合、構成要素は電力、メーカーのみならず利用者である国民、政府、地方自治体など広い範囲が含まれるが、こういう認識を広く共有させるための努力が今後とも必要との総括が行われた。


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