[原子力産業新聞] 2008年8月21日 第2441号 <3面>

欧州委 廃棄物処分で意識調査 大多数がEU共通の対応希望

欧州委員会(EC)の世論調査部門であるユーロバロメータはこのほど、3年ぶりに実施した放射性廃棄物に関する意識調査で、EU市民の大多数が廃棄物処分について、その具体的な実施と欧州共通のアプローチを望んでいることが明らかになったと発表した。

ユーロバロメータはこれまで、原子力発電や放射性廃棄物に対する意識調査を1998年、2001年および05年に実施しており、今回の調査はこれらをフォローアップする位置づけ。2月18日〜3月22日までの間にEU加盟27か国の市民2万6,746人を対象に聞き取り調査を実施した。過去3回の調査との相違点として、「放射性廃棄物管理におけるEUの役割」という設問を新たに加えたほか、対象国もEU加盟国の拡大に合わせて増加しているという。

それによると、原子力発電の受容において放射性廃棄物が最大の課題となっている点に変わりはなく、原子力に反対している人の10人中4人が「放射性廃棄物の管理で安全かつ永久的な解決方法があれば意見を変える」と答えていた。

また、回答者10人のうち9人までが「EU加盟各国は具体的かつ明確なスケジュールを盛り込んだ放射性廃棄物管理計画を策定すべきだ」と回答。それと同程度の回答者が、加盟各国の役割の重要性を指摘しつつも、EUによる各国の実施状況監視と調整を希望していることが判明した。

原子力発電に対する支持派の割合は前回調査の37%から今回44%と確実に向上しており、それに伴い反対派は55%から45%に後退。特に、国内で原子力施設が稼動している国や、市民が放射性廃棄物の問題について適切に情報を与えられていると感じている国では支持率が過去最高レベルだったとしている。原子力のメリットに関しては、CO排出量削減やエネルギー源の多様化、および原油輸入への依存低減に貢献できることを認知している人の割合がそれぞれ62%、64%、および63%と、EU諸国の市民の過半数が知るところとなったことが判明している。

高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分方法については、EU全体として圧倒的多数の人々が「今すぐ解決策を見つけるべきであり、将来の世代に先送りしてはならない」という点で意見が一致していた。43%の回答者がHLWの長期的な管理方法として深地層処分が最も適切であると考えている一方、回答者の72%は「HLWを排除する安全な方法などない」と考えていることも明らかとなっている。

廃棄物の管理に関する情報については、その情報源が科学者や非政府組織である場合に信頼される度合いが強かった。さらに、欧州市民の大多数は原子力政策の決定プロセスに対して積極的に行動するタイプで、例えば自宅の近隣に地下処分施設を建設するか否か、などの問題に対しても直接参加したいと考えていることが分かっている。


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