[原子力産業新聞] 2008年9月11日 第2444号 <4面>

実用化に向け戦略展開を 原産協会 高温ガス炉で報告書

原産協会の「原子力熱利用検討会」(座長=関本博・東京工業大学原子炉工学研究所教授)はこのほど、「原子力の利用拡大に向けた高温ガス炉の実用化開発の重要性」と題する報告書をとりまとめた。熱利用分野への原子力利用拡大を図るべく、国家戦略の一環として、高温ガス炉の実用化開発推進を訴えるもの。

同検討会はこれまでも、高温ガス炉による発電や水素製造等の熱利用について調査・検討し、提言を行ってきたが、昨今の地球温暖化問題を踏まえ、実用化開発を見据えた高温ガス炉の有用性を広く社会に対し啓発する必要から今回のとりまとめに至った。本報告書ではまず、(1)およそ1000℃の高温供給(2)固有の安全性(3)熱供給による水素製造、ガスタービン発電、化石燃料改質など多様な発展性――といった特長をとらえ、日本が高温ガス炉開発を進めてきた結果、「技術は世界の最先端にある」と、技術力を評価。その上で、実用化を目指す世界各国の協力要請に応え、今後も世界のトップランナーを維持しながら、国際的に貢献していくよう期待をかけている。

国内では、熱出力600MWの高温ガス炉1基(稼働率85%)で最大70万台/年の燃料電池自動車に水素を供給するとして、60〜100基の潜在的需要が見込まれる試算を示したほか、高温ガス炉で製造した水素をコークスの代替として還元材に利用する「水素還元製鉄」により、CO排出の大幅削減が可能なことにも言及した。

内外の展望を踏まえ、報告書では、今後の高温ガス炉実用化戦略の大枠として、国による評価と国家総合戦略計画への組み入れ、産官学の参加・協力・分担による実施展開、海外との協力による早期実用化・国際展開を掲げた。具体的戦略展開の内容に関しては次年度以降、検討する。


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