[原子力産業新聞] 2008年9月18日 第2445号 <1面>

経産省 ガラス固化の新技術開発へ 3年計画、事業費は140億円 原燃主体にオールジャパン体制で

経済産業省は日本原燃・六ヶ所再処理施設のガラス溶融炉の更新に備え、来年度から新しいガラス溶融炉やガラス素材の開発を推進する計画をまとめた。日本原燃を開発主体とし、開発費として3年間で総額140億円を計上、国は使用済燃料再処理事業高度化補助金として、この内の半分の70億円を負担する。来年度は20億円を概算要求した。現行の直接通電加熱方式を踏襲し、安定稼動のための様々な技術を開発する計画だが、「外部加熱方式を切り捨てている訳ではない」としている。

開発計画は、16日に開いた総合資源エネルギー調査会原子力部会の核燃料サイクル技術検討小委員会(委員長=田中知・東大院教授)で原子力立地・核燃料サイクル産業課が説明した。

開発テーマは、(1)新型ガラス(2)新型ガラス溶融炉の構成技術(3)炉底技術(4)新型ガラス溶融炉(5)ガラス溶融炉解析コード――など。新型ガラスは、高レベル廃液が溶融しやすいガラス素材や白金族元素を含む同廃液をより多く取り込むことができるタイプを開発。構成技術では、炉底に堆積した白金族元素を攪拌する装置、廃液とガラスの混合性を高めるバブリング装置、正確なガラス密度や液位を測定する計測装置など。炉底技術では、白金族元素の抜き出し性能の向上、同元素堆積に影響されない加熱装置、交換可能なストレーナなどを開発する。

新型溶融炉の開発ではこれらの技術を反映させ、実規模の装置を製作し、確証試験まで実施する方針。また、解析コード開発により、新型溶融炉の炉内挙動を正確に模擬できる技術の確立を目指している。

国は事業実施にあたり、日本原燃への補助率2分の1で補助し、09年度は20億円、10年度と11年度は25億円を負担する計画。

小委員会では各委員とも同計画に賛同したが、海外の溶融炉で実績がある外部加熱方式を検討する計画の確認などとともに、現在問題となっている溶融炉からガラスを流下させるノズル機構についても技術開発が必要との意見も出された。経産省は、新型ガラスの開発ではガラス工業に携わる技術者や学識経験者などの参加も要請、オールジャパン体制で推進したいとした。

六ヶ所再処理施設のガラス溶融方式は、日本原子力研究開発機構が開発したガラスに直接電流を流して加熱する直接通電方式。運転効率が高く、溶融炉の寿命も5年程度と、外部高周波過熱方式に比べ10倍近く長いなどの特徴を有する。

現段階で、次期溶融炉も直接通電方式をベースに考えており、3年間で開発を進め、現在の溶融炉の更新時期となる2012年頃に導入する計画。新型ガラスの利用により、処分時の安全裕度の一層の向上やガラス固化体の製造本数の削減などを進めることも可能としている。


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