[原子力産業新聞] 2008年10月2日 第2447号 <1面>

IAEA総会開催 国際的期待の中で 権限、組織強化が課題 事務局長選が焦点へ

【29日、ウィーン=石井敬之特派員】国際原子力機関(IAEA)は29日よりオーストリアのウィーンで第52回通常総会を開催した。併せて、「IAEAの将来の役割」をテーマに2日間の科学フォーラムも開催した。総会は10月4日まで開催される。

M.エルバラダイ事務局長は「岐路に立つIAEA」と題してスピーチし(=写真)、原子力発電、原子力安全、および核不拡散、保障措置、核セキュリティの3S問題などあらゆる分野で、IAEAが厳しい決断を迫られていると指摘。IAEAに、より強い権限、最新の技術力、関連情報へのアクセス権、十分な資金と人材を供給するよう、加盟各国に協力を要請した。

また同事務局長は、「2030年までに原子力発電設備容量は現状の2倍に拡大するが、総発電電力量に占める原子力の割合は14%に留まる」と指摘。その一方で、あらゆる国は平等に原子力発電を利用する権利があるとした上で、「今後は原子力導入を検討する途上国に対する支援の機会がますます増える」との見通しを示した。

また、原子力発電利用の拡大に伴い、使用済み燃料管理や放射性廃棄物処分への対応が重要な課題になると指摘し、「地層処分は技術面で完成されているものの、実際に地層処分場の操業が開始しない限り、世論の理解を得ることは難しい」と述べ、「地層処分分野の先進国から後進国への情報提供にあたっては、IAEAが重要な役割を担う」と、両者の橋渡しとしての役割を強調した。

日本からは松田岩夫参院議員(元内閣府特命担当大臣)が政府代表として出席。講演の中で、「世界的な原子力ルネサンスの潮流にあるが、3Sに基づく環境整備が肝要だ」と強調した。また松田代表は、IAEA次期事務局長への天野大使擁立を改めて強調し、広く各国の支持を求めた。


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