[原子力産業新聞] 2008年10月2日 第2447号 <3面>

フランス電力 英国原子力市場での台頭狙い BE社を125億ポンドで買収

フランス電力(EDF)は9月24日、長期間にわたって難航した交渉の末、英国のブリティッシュ・エナジー(BE)社を125億ポンド(1株当り774ペンス)で買収することで両社が最終的な合意に達したと発表した。

これにより、英国の8サイトで稼働する軽水炉1基とガス冷却炉14基がEDFの所有となるほか、新規原子炉の建設に適したサイトの所有権も同社に移ることになった。ただし、実際の買収はEDFの100%子会社であるレイク・アクイジッションズ社を通じて実施される予定で、レイク社はブリティッシュ・ガス社の親会社であるセントリカ社にBE社株の25%を売却することで了解覚書(MOU)に署名。セントリカ社は英国で新たに建設される原子力発電所から25%の電力を受け取ることになる。

また、BE社株の36%を「原子力債務基金」で保有していた英国政府は、その売却益である44億ポンドが同基金に還流されるとしたほか、その他のBE株の売却益を加えれば既存の発電所の廃止措置債務を賄うことも可能だとしている。

一方、EDFは買収交渉が頓挫した場合の予備計画として入手していたウィルファ・サイト近郊の土地の売却に合意。このほか、すでに原子炉が閉鎖されたエセックス州のブラッドウェルやケント州のダンジネス・サイトの土地も、新規原子炉の建設用としてドイツのE・ON社やRWE社などの企業に売却するとしている。また、これらの売却が済んだ段階で、EDFはサマセット州のヒンクリーポイント・サイトとサフォーク州のサイズウェル・サイトに各2基、合計4基のEPR(欧州加圧水型炉)を建設・操業すると発表しており、初号機の完成は2017年になる計画だ。

今回の買収交渉を支援してきた英国ビジネス規制改革省(BERR)のJ.ハットン大臣は、「原子力発電所の操業経験が豊富で、新規原子炉を建設する財力にも恵まれたEDFに売却が決まり非常に喜んでいる」とコメント。新規原子力発電所の建設や操業、廃止事業が国内の原子力供給業者の活性化や英国の原子力発電シェアの拡大につながることへの期待を表明した。

EDFのP.ガドネ会長は、新規原子力発電所に投資する上で英国は世界で最も有力な市場の1つだとしており、BE社の買収によりEDFが英国の原子力市場で優位な立場を確保し、国外でのEPR建設を通じて国際的な展開を図ることができるとの考えを示したという。

しかし、今回の買収について、アナリストの間では疑問点も提示されている。特に、BE社の資産すべてを他国の政府に渡してしまうことが賢い判断であるか否かという点に加えて、一社で発電・売電という垂直統合された大型供給業者の成立が電力卸売市場における取引量を減らすことになり、価格が不安定になりやすいという点。さらにEDFにとっては、欧州における今後の電力価格の動向や老朽化したBE社の原子力設備からの発電量が不確定要素になるのではないかと見られている。


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