[原子力産業新聞] 2008年10月23日 第2450号 <1面>

原子力機構 2100年ビジョンを策定 原子力比率を約7割に

日本原子力研究開発機構はこのほど、2100年までの日本のエネルギー需給シナリオを示した「2100年原子力ビジョン――低炭素社会への提言」をまとめた。同年の発電電力量に占める原子力構成比は、核分裂炉と核融合炉を合わせ67%を想定(=図)、同じくCO排出量は現在の約90%削減を目指す。

このビジョンの目的は、多くの人々に将来のエネルギー需給のあり方を考えてもらい、議論を促進すること。化石燃料依存からの脱却、エネルギー安定供給、CO排出削減のために必要な技術的オプションを原子力機構が開発中の技術などを中心に検討し、定量的な効果を推測した。

提言のポイントは、(1)需要面では電化・水素化を進め、特に運輸分野の高効率化を促進。供給面では再生可能エネや原子力を積極的に導入(2)原子力は発電に加え、水素製造の熱源にも利用(3)2100年の最終エネルギー消費量は現在の約60%に抑え、電力を現在の約25%から約60%、化石燃料を同約75%から約30%、水素を約10%の各構成比とする(4)同じく一次エネルギー供給量では原子力を現在の約10%から約60%、化石燃料を同約85%から約30%、再生可能エネルギーを同約5%から約10%の各構成比とする――など。

2100年の発電電力量は1兆7000億kWh前後を想定、原子力は軽水炉18%、FBR35%、核融合炉14%の合計67%の構成比となる。発電設備容量は約370GWを想定、軽水炉10%、FBR21%、核融合炉9%の合計40%の構成比。水素製造のため、2100年の高温ガス炉は120基で熱出力72GWを目指す。

ビジョン実現に向けた課題としては、社会的合意形成、技術開発の推進、原子力のバックエンド対策などを挙げた。バックエンド対策では高レベル放射性廃棄物の処分に関連し、分離変換技術の重要性を指摘。

同技術が実用化されれば潜在的有害度を100分の1程度に低減でき、発熱性核分裂生成物の分離・長期保管と組み合わせることにより、処分場の面積を数分の一から100分の1程度に縮小できる可能性を強調している。


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