[原子力産業新聞] 2008年10月23日 第2450号 <2面>

文科省 原賠制度見直し案示す 賠償措置額、現行から倍増

文部科学省の「原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会」(座長=野村豊弘・学習院大学法学部教授)は17日、政府と事業者間の補償契約に関する期限の10年間延長、賠償措置額の倍増などを柱とする第1次報告書案をとりまとめた。近々、意見公募に付す。

現行原子力損害賠償法の「09年末まで」との時限的な規定を踏まえ、文科省では6月より、法改正を見据え、制度全般の見直しに着手した。今回の報告書で、適用期限については、過去の制度見直しにならい、09年12月末から10年間の延長とした。

同法に定める賠償措置額は、国際的水準や民間の責任保険の引受能力の向上を踏まえ、現行の最大600億円から1200億円へ引き上げるほか、事業の種類・規模に応じた政令で定める特例額を、現行の120億円または20億円から、それぞれ240億円または40億円に引き上げるなど、いずれも倍増させることとしている。

また、原子炉の廃止段階での賠償措置額について、炉心から全ての使用済み燃料を取り出した後は、使用済み燃料貯蔵事業と同額、さらに、未使用の燃料体・使用済み燃料の全てをサイト外に搬出した後は、低レベル放射性廃棄物管理と同額とするなど、事業廃止段階の損害賠償措置を合理化する考えを導入した。

前回の制度改正以降に発生したJCO臨界事故の経験を踏まえ、本検討会では、損害賠償に関する紛争解決の支援システムについても審議を行った。原賠法に基づき、和解仲介のため文科省に設置する「原子力損害賠償紛争審査会」に、損害の範囲、賠償額の算定方法等に関し指針を定める機能を持たせるなど、原子力損害発生時、行政による適切な支援を通じ、自主的な解決が図られるようにする。具体的な支援のあり方については今後、運用ガイドラインを作成していく。

検討会では、11月中を目途に第1次報告をとりまとめた後、運用ガイドライン、国際条約への対応について引き続き、ワーキンググループを設置し審議を進める。


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