[原子力産業新聞] 2008年10月23日 第2450号 <3面>

イタリア 規制局設置で法案審議 2013年までに新規原子炉の着工目指す

イタリアのC.スカヨラ経済開発相は16日、経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)の設立50周年記念特別会議で演説し、「2013年までにイタリアで新規原子力発電所の建設を開始し、2030年には電力需要の25%を原子力で賄いたい」との抱負を表明。4月に発足したS.ベルルスコーニ政権がすでに原子力安全規制機関を設立するための法案審議を始めていることを明らかにした。

演説の中でスカヨラ経済相はまず、(1)エネルギーの供給保証(2)競争力のあるエネルギー源の確保(3)地球環境保全、という3つの課題解決に大きく貢献できるエネルギー戦略として、イタリアの現政権が原子力開発利用の再開を決定したことを改めて明言。同国で1987年の国民投票後、国内の原子炉4基すべてを閉鎖したことは直接経費、間接経費を含めて500億ユーロの出費につながるなど「恐るべき誤り」だったとの見解を示した。

同相によると、イタリアの近年の発電コストは欧州の多くの国々と比較して3割増しとなっており、エネルギー・ミックスの6割以上を輸入天然ガスに頼っている。このため、同相は原子力こそコスト高と輸入依存の軽減、そしてCOの排出抑制という問題を同時に解決可能な方法ととらえており、2013年までに新規原子炉の建設を開始できるよう、現議会の任期中に規制上、技術上の諸条件を整えることをベルルスコーニ政権の最初の目標とする考えであることを明らかにした。

イタリアではこの演説に先立つ14日、すでに議会下院の生産活動委員会が国の原子力安全規制機関の設置条項を含む法案を承認。同法案は今後、下院や上院で審議されることになるが、スカヨラ経済相はこの機関の具体的な機能として、建設サイトや適格な技術を選択するための基準制定、認可手続きの簡素化、土地収用に伴う住民への補償の枠組みの制定、廃棄物管理および廃止措置に関する戦略の策定――などを挙げている。

同相はまた、原子力発電の復活にはイタリアのエネルギー・ミックスを再調整するという長期的な狙いがあると指摘。現政権は2030年までに電力需要の25%を原子力で賄い、再生可能エネルギーで25%、化石燃料で残りの50%を供給する計画だとしている。同相によると、イタリア国民の過半数がすでに政府のこの計画に賛成しており、今後この計画における作業を円滑に進めていくためには国際社会の協力と協調が不可欠だとNEA加盟国に呼びかけた。

なお、スカヨラ経済相は11日、フランスのノルマンディ地方を訪問し、フランス初のEPR(欧州加圧水型炉)となるフラマンビル原子力発電所3号機の建設状況を視察している。


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