[原子力産業新聞] 2008年10月30日 第2451号 <11面>

〈日本原子力研究開発機構理事長賞〉高水学園高水高等学校(山口県)・3年 大矢格 技術と知恵で原子燃料サイクル実現へ

この夏行なわれた北京オリンピック。水泳の北島選手の金メダルも感動的であったが、陸上男子、4×100メートルリレーは、感動だけでなく、私たちに大きな希望を残してくれた。有力ライバルチームが失格になるという幸運も重なったが、4人が正確に素早くバトンを渡すという技術力も含んだ総合力で、銅メダルを獲得したのだと思った。解説の元オリンピック選手も、同じことを言っていた。

数日後、国連協会の講演で、気象予報士の石原良純氏の話を聞く機会があった。石原氏は、日本チームのリレーにおけるバトンパスの技術を例に挙げながら、「日本は、エネルギー源も、食料もないけど確かな技術力は持っている」と、話された。工場・IT・医療など、さまざまなところで、日本の技術力のすばらしさに気付いてはいたが、オリンピック競技での感動的な場面での技術力は、確実に私たちに夢と希望を与えてくれたのである。

そのオリンピックが行なわれた今年の夏も、昨年以上に暑い日が続いた。昨年までは、我が家で冷房を使うことがなかったのだが、今年はついに使用せざるを得なかった。冷房を使用することで気になるのが、電気代である。7月分の電気代は、一気に昨年の3.5倍になっていた。使用量の数字からは、あまり感じないのだが、料金の数字を見ると、エネルギーをたくさん使用してしまったという、罪悪感に苦しめられた。私が住む中国地方には、原子力発電所が1ヶ所しかない。原子力発電は、発電時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーなのだが、原子力発電所が少ないので、日本で一番、二酸化炭素を排出している地域になっている。

だから、気をつけて、できるだけ電気を使用しないようにしていたのだが、こうも暑いと我慢の限界であった。

洞爺湖サミットでも、地球温暖化対策として原子力発電が再評価され、原子力支援で合意された。また、原子力発電は、使い終わったウラン燃料をリサイクルできるという利点がある。化石燃料は、限りある資源としてよく話題になるが、ウラン燃料だって限りがあるのは、当然である。だから、リサイクルできるというのは大きなメリットになると思う。

リサイクルというと、ついついペットボトルや古紙が頭に浮かぶ。ペットボトルのリサイクルについては、賛否両論を耳にする。核燃料リサイクルについてあまり耳にすることがないのは、原子力発電自体を認めようとしない動きが大きいのか、それとも問題が難しすぎて考えようとさえしないのか疑問に思えた。ほとんどの電力会社の原子力発電所や六ヶ所村のいろいろな施設まで見学したことのある母は、原子燃料サイクルについての資料をたくさん持っていた。よい機会なので、資料を借りて、いろいろ調べてみることにした。

いろいろ調べてみて、原子力発電は、資源をリサイクルできるという点で、日本が今後選択すべき道であると再確認した。燃料をリサイクルするということは、原子力発電の特長であり、未来があるということで重要なのである。

今、燃料サイクルが計画されているが、ウランを使い放しにして、そのまま捨ててしまったのでは、石油を使う火力発電と同じになり、意味がなくなるであろう。また、原子燃料のリサイクルは、使った量以上の新しい燃料を作ることができるという利点もあるのだ。まず、一度原子力発電所でウランを使用すると、燃え残るウランと新しくプルトニウムができる。これらを燃料として再び使用すると、ウランの利用率は、20パーセントもふえるのである。また、再処理という立場から考えると、ゴミになる部分(つまり廃棄物)の量を減少させることができるという利点にもなるのだ。

あと、ナトリウム火災事故で開発計画が大幅に遅れてしまっている高速増殖炉を使用すると、プルトニウムを1.2倍にまでふやすことができるらしい。普通に考えると、一燃やすと残りはゼロである。しかし、一燃やして1.2できるという夢のような話である。これも、1種のリサイクルと考えてよいのではなかろうか。将来にわたって、安定したエネルギーを確保するには、原子力発電自体の開発とともに、高速増殖炉まで含んだ原子燃料サイクルの確立を早急にするべきであろう。

そして、これらをいかに安全に動かすかということが重要なのである。プルトニウムは原子爆弾にもなる危険な物である。冷却材としても危険なナトリウムを使用する。しかし、冒頭でも述べたように、日本には確実な技術と知恵がある。それらを過信するわけではないが、利点の大きさを考えて、発展させるべきプロジェクトであろう。

これらの原子燃料サイクルがうまく回り始めた時、エネルギーを安定供給できるだけでなく、将来のエネルギーをまかなうことができる備蓄資源ともなるのだ。資源が少ない我が国にとっては何よりもの宝になるはずだ。

今回、原子燃料サイクルについて調べてみて、原子力発電やサイクルが重要であることを理解したが、それ以上に、今何をすべきかということを発見した。それは、原子力に対する正しい理解が必要であるということだ。原子力発電と原子爆弾は違うということ。放射線と放射能は違うということ。危険な物を扱うからこそ、安全管理がしっかりしていることなどである。

また、原子燃料サイクルについて耳にすることがなかったと思っていたが、プルサーマル・もんじゅ・MOX燃料については、耳にしていた。つまり、言葉と知識が一致していなかったのだ。また、原子燃料サイクルには良い所もあるが悪い所(危険)があることも理解しないといけない。

私は、今一度学ぶ中で、日本の技術と知恵に原子燃料サイクルの実現を願った。


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