[原子力産業新聞] 2008年11月6日 第2452号 <1面>

エネ調・国際戦略小委 燃料供給など議論開始 国・機関・事業者一堂に 初会合から活発な意見

総合資源エネルギー調査会原子力部会の国際戦略検討小委員会(委員長=田中知・東大院教授)は10月30日、初会合を開催(=写真)、世界的な原子力発電の拡大に対応した国際協力や関連産業の国際展開支援などの検討を開始した。今後、月1回程度のペースで審議、来年春には中間取りまとめの予定。

同小委員会の設置は8月の原子力部会で決定していた。初会合でエネ庁が示した主要検討事項案は、@新規導入国への支援A先進利用国との連携B核燃料の安定供給確保とサイクル関連産業の強化C我が国原子力関連産業の競争力強化と国際展開支援――など。

具体的論点として、新規導入国支援では国内推進体制の整備、政府と民間企業の連携、二国間支援と国際機関連携の組合せ、原子力損害賠償制度の整備など。先進利用国との連携ではサイクル政策やFBR技術開発の連携、安全規制協力など。燃料関連では国際的燃料寡占への対応、濃縮事業や再処理事業の戦略的展開など。関連産業では燃料を含むサプライチェーン構築に向けた国や電気事業者の連携、次世代軽水炉、電気事業者の国際展開、プラントメーカーを支える産業群の維持、ファイナンス政策、人材育成策などを挙げた。

委員からは、「海外展開により、人材や裾野を含む技術を維持することが重要」(山名元・京大教授)、「原子力産業は半導体産業の二の舞を避けるべき。プラント技術だけでなく燃料サイクルの扱いが重要」(市川眞一・クレディ・スイス証券チーフストラテジスト)、「最後は国と国の関係、国の顔がしっかり見える体制の整備を」(伊藤範久・電事連専務理事)、「濃縮事業での日本企業の存在の確立が重要」(前田匡史・日本政策金融公庫国際協力銀行資源ファイナンス部長)、「世界は日本のより早い対応を期待している。燃料サイクルとのセットなくして国際展開は有り得ない」(兒島伊佐美・日本原燃社長)。

「安全性などの国際規準化が重要。燃料サイクル技術協力はMAの扱いが鍵」(佐賀山豊・原子力機構理事長特別補佐)、「燃料サイクルは国際協調が重要、アジアで燃料施設の共有も可能では。裾野産業の維持・強化の議論も重要」(服部拓也・原産協会理事長)、「中東産油国への原子力協力の方策、ウランの需給分析などが重要」(小山堅・日本エネルギー経済研究所理事)。

「民間と国の役割を分けた議論が必要。国際展開では燃料サイクルや現地工事対応が大きな課題になる」(井上裕・三菱重工執行役員原子力副事業本部長)、「現地工事対応が最大の課題。プラントメーカーが国際展開できるかどうか、踏ん張りどころと思う」(羽生正治・日立GEニュークリア・エナジー社長)、「国・電気事業者・プラントメーカー・ファイナンス機関などが一堂に会した議論は有意義。長期的にブレのない政策を進める必要がある」(五十嵐安治・東芝執行役常務電力システム社社長)などの意見が出された。


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