[原子力産業新聞] 2008年11月6日 第2452号 <3面>

NRG社に買収の申し入れ 米エクセロン社

米国シカゴの大手電力会社であるエクセロン社は10月19日、ニュージャージー州を本拠地とするNRGエナジー社に対して、同社の発行済み株式のすべてを1株当たり26.43ドル、17日の終値換算で総額62億ドルで購入したいと申し入れたと発表した。

エクセロン社はNRG社に宛てた買収申し入れ書簡の中で、買収条件としてNRG株1株をエクセロン株0.485株と交換することを提案。17日付のエクセロン社株の終値が54.50ドル、NRG株が19.33ドルであったことから、NRG社の普通株の価格は1株当たり約26.43ドルに換算され、終値より37%アップすることになる。

エクセロン社は、両者が合併すれば企業価格で約600億ドル、保有発電設備で4,700万kWという全米最大規模の電力会社が誕生すると指摘しており、豊かな財政基盤と強力な供給能力により米国で急増しているエネルギー需要に十分対応可能になると断言。合併の利点を強調している。

エクセロン社はまた、同社がブレインウッド発電所を始め、全米で17基の原子炉を保有していることから、NRG社の買収により原子力の設備容量が1,800万kWに拡大する点にも言及した。両者の統合は、発電施設の立地地域、および火力と原子力の燃料調達という点で他に例を見ないほど多様化を図ることができると強調している。同社はさらに、NRG社が抱えている80億ドルを越す負債についても合併統合によって軽減可能との見通しを示している。

一方、NRG社側は20日付けの発表で、エクセロン社の申し入れを「一方的に送り付けられた提案」と形容。取締役会で内容を吟味し、対応を決定するまでは何も行動を取らないよう株主に呼びかけたほか、財務アドバイザーおよび法律顧問会社と協議を開始したことを明らかにした。

NRG社は全米でもトップクラスの稼動実績を持つサウステキサス・プロジェクト原子力発電所の株式の44%を所有。昨年9月には同発電所3、4号機(各135万kW級ABWR)の増設を想定し、全米で初めて完全な形の建設・運転一括認可(COL)を米原子力規制委員会に申請するなど、原子力発電への投資に力を入れている。

なお、NRG社の株式は、著名な企業投資家であるウォーレン・バフェット氏の率いるバークシャー・ハサウェイ社が一部を保有しており、購入時の価格は1株当たり約42.9ドルだったと伝えられている。エクセロン社が今回提示したNRG社株の価格はそれを下回ることから、専門家はバフェット氏がNRG社株を手放さない可能性も指摘しており、今後の動静が注目されている。


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