[原子力産業新聞] 2008年11月13日 第2453号 <2面>

原子力委・部会 核融合政策評価で意見交換

原子力委員会の核融合専門部会(部会長=高村秀一・愛知工業大学工学部教授)は7日、つくば国際会議場(茨城)で、「ご意見を聴く会」を開催した(=写真)。

同部会がとりまとめた核融合研究開発に関する政策評価報告書案に対し、一般との意見交換を行うもの。核融合専門部会は、原子力政策大綱などに示された国内の核融合研究開発に関する妥当性評価に向け、昨秋から7回の会合を開催し、このほど報告書案をまとめた。

「ご意見を聴く会」ではまず、本報告書の概要を事務局より説明し、続いて、意見発表者として事前に選ばれた時松宏治・エネルギー総合工学研究所主任研究員、永山悦子・毎日新聞科学環境部記者、神田久生・つくばエキスポセンター運営業務部長が順に発言した。

時松氏は、核融合開発に対する費用対便益の世間的感覚が、割高感に傾いている現状を図示した上で、評価の充実、信頼の獲得、人材の育成を通じ、長期大型研究予算の今日的意義を示すよう提言した。

報道の立場から、永山氏は、核融合関連の記事がほとんど、科学面、地域面のいわゆる「ベタ記事」として取り上げられていることなどをあげ、一般の関心の低さを懸念した。

一方、普及啓発活動に携わる神田氏は、文部科学省の理数教育強化取組「スーパーサイエンス・ハイスクール」での研究発表・実験、科学館・イベントでの展示・説明の経験を述べ、「科学技術に対する関心の高い社会の形成」を求めた。

「発電をしていないから国民の関心が低いのでは」との高村部会長の発言に対して、原築志委員(東京電力技術開発研究所長)は、「何を目標として、何ができているのか、ロードマップを『見える化』していくことが必要」、寺井隆幸委員(東京大学工学系研究科教授)は、「アバウトでもいいから発電炉までの道筋を明確に」などとそれぞれ応えた。

一般参加者からの「人材育成といっても実際的政策としてよく見えてこない」との意見に対して、永山氏は、毎日新聞連載企画「理系白書」から、「海外と比べ日本は研究・技術者が大事にされていない」傾向を指摘した。また、「早期実現が重要」との意見について、内山洋司委員(筑波大学システム情報工学研究科教授)は、「もんじゅ」の長期停止を例に、「技術が社会に受け入れられるためには、いろいろな障害を越えないといけない」などと述べた。


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