[原子力産業新聞] 2008年11月13日 第2453号 <3面>

米国の次期大統領にオバマ氏 ユッカマウンテンへの影響に懸念

4日に米国で行われた大統領選挙の結果、民主党のB.オバマ候補が共和党のJ.マケイン候補を圧倒的大差で破り、第44代米国大統領に就任することが決まった。明確な原子力支持を打ち出していた共和党のブッシュ政権に代わって、原子力発電に対して慎重な立場を取る民主党が8年ぶりに政権の座につくことから、新規原子炉建設への対応など、今後の原子力政策の行方が注目される。

選挙運動中に明らかにされていたオバマ次期大統領の原子力政策は、一言で言えば「条件付き容認」。「原子力は温室効果ガスを出さずに発電した電力の7割を占めており、原子力を排除して積極的な温暖化防止目標を達成することは難しい」との現実的な評価を下している。その一方で、原子力の拡大という点に関しては、「核燃料と放射性廃棄物の安全保障、核不拡散という課題への取り組みが大前提」とし、慎重な立場を崩していない。

また、使用済み燃料の処分問題については、昨年10月にH.レイド上院院内総務に宛てた書簡の中で、「健全な科学に裏打ちされた安全で長期的な代替案を模索すべきだ」と訴えるなど、ユッカマウンテン計画の放棄を強く進言。安全審査中の同計画遂行に何らかの影響が出る可能性は高い。

同書簡の中でオバマ氏は、自らの選挙区で原子力が電力需要の50%を賄っている事実に言及した上で、他の州の使用済み燃料をネバダ州まで輸送する際の住民の安全確保に懸念を表明。ネバダ州民の反対を押し切ってユッカマウンテンを処分地に決定したこと、科学的見地から見た同地の処分場としての適性、および廃棄物を1か所に集中貯蔵することの適否にも疑問を呈している。

一層実行可能な代替案としてオバマ氏は、(1)国の永久処分場受け入れを厭わない州を他に探す(2)地方ごとに処分場を建設する(3)あるいは安全で長期的な解決法が実行可能になるまで廃棄物を発電所敷地内に安全に貯蔵できるよう資財を投入する−−などを列記した。

なお、米印原子力協力協定に関してオバマ氏は、9月に原子力供給国グループがインドを特例扱いとすることを決定した際、これを歓迎する声明を発表。「議会への早急な協定案の提出を期待する」と述べるなど、インドとの原子力協力促進に意欲を示している。


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