[原子力産業新聞] 2008年11月27日 第2455号 <1面>

政府・検討委 温暖化ガス削減 中期目標の策定を開始 原子力利用率で意見も

政府の地球温暖化問題懇談会の下に設置された中期目標検討委員会(座長=福井俊彦・前日銀総裁)は25日、初会合を開催(=写真)、我が国の2020年の温暖化ガス排出量の削減目標に関する検討を開始した。13年以降の次期枠組みの交渉期限のCOP(締約国会議)15を来年末に控え、今年7月に閣議決定した「低炭素社会づくり行動計画」で来年の然るべき時期に公表するとした中期目標の策定に向け、複数のシナリオを提示する。来年半ばには中間報告を作成する見通し。

委員会は複数の目標値を仮置きし、各目標値を実現するためのライフスタイル転換等の様々な対策、コスト負担、経済的効果などを明確にし、国民に選択肢として提示する。産業界・有識者・NGOなどからのヒアリングや国民アンケートなど広く関係者の意見も聴く。また内外に検討内容を発信できるよう、モデル分析を精緻に行うなど科学的・論理的に検証し、温暖化問題の解決、経済成長、資源・エネルギー問題が両立するよう総合的観点で検討する。

選択肢として示す複数の目標値のうちで中期目標への採用、対外的な発表のタイミングなどは、国際交渉の状況や国内世論の動向などを踏まえて判断するとしている。

初会合では、委員の茅陽一・地球環境産業技術研究機構副理事長が温暖化対策評価のフレームワークと試算例、同じく内藤正久・日本エネルギー経済研究所理事長が長期エネルギー需給展望、同じく西岡秀三・国立環境研究所特別客員研究員がAIM(アジア太平洋統合評価モデル)プロジェクトなどを説明。

原子力に関しては、内藤理事長が同展望の中で、1次エネルギーの国内供給に占める原子力の比率が90年度の10%から20年度には18%に拡大するとの予測を示したほか、同じく委員の湯原哲夫・東大特任教授は「原子力は技術的に確立されているが、利用率が低く、十分利用されていない」と指摘した。

我が国は「低炭素社会づくり行動計画」で2050年の長期目標で、現状の60〜80%削減を掲げた。中期目標ではEU27か国が90年比20%削減を打ち出し、米国のオバマ次期大統領が90年レベルに抑えるとの公約を掲げている。


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