[原子力産業新聞] 2008年12月4日 第2456号 <2面>

原子力機構 超高温ガス炉燃料用 炭化Zr被覆 実用化に道

日本原子力研究開発機構はこのほど、超高温ガス炉の燃料用として実用化が期待される炭化ジルコニウム(ZrC)被覆材について、準商用規模の製造に成功し、米国との共同で世界で初めて同被覆材の中性子照射試験を開始した。

現在の高温ガス炉の燃料は二酸化ウラン燃料核をセラミックスで四重に被覆した粒子型燃料が使用されている。この内の第3層は許容設計限界が1600℃の炭化ケイ素(SiC)が用いられ、金属核分裂生成物に対する拡散障壁や被覆層の強度確保など重要な役割を担う。しかし原子炉出口温度が950℃以上の超高温ガス炉の実現には、この層に融点が3420℃のZrCの導入が必要とされ、各国が開発を進めている。

今回、原子力機構は臭化物法と呼ばれる化学蒸着法を用いて均質なZrC被覆層の蒸着に成功した。ZrCを被覆材に使用するためにはZrとCの原子数を一対一に精密に制御する必要があるが、誘導結合プラズマ発光分光法と赤外吸収法を組み合わせて原子数比を100分の1の精度で測定できる手法などの開発により実現した。

準商用規模で製造した高性能被覆燃料粒子用被覆材で中性子挙動などの性能試験データを拡充するのは世界でも初めてで、この製造結果に強い関心を寄せる米国と共同で今月から中性子照射試験を開始した。


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