[原子力産業新聞] 2008年12月11日 第2457号 <2面>

駐日イラン大使 査察受入れ、平和利用を強調

今年3月に就任した駐日イラン大使のセイエッド・アッバス・アラグチ大使が5日、笹川平和財団主催の東京での講演会で、「イランの原子力開発と外交」と題して英語でスピーチした。報道関係者や研究者ら約100名が参加した。

大使は同国の原子力開発の歴史について紹介。イランの原子力開発計画は新しいものではなく、51年前の1957年に当時のパーレビ国王と米国との間で開始し、米国企業が5MWの研究炉を作り、今でもテヘラン郊外で稼働している、とした。74年にはドイツ(旧西独)のシーメンス社とブシェール原子力発電所の建設契約を結び、フランスとも燃料開発で協力関係を結んだ。

それらの協力が79年の革命ですべてが停止し、ブシェール原発は85%が完成していたが、欧米はすべて引き上げ、「以降、我々は独自で対処することにした。ウラン濃縮もだ」と述べ、同原発計画はロシアに引き継いでもらい、現在、ロシア技術者によって、燃料装荷中で、来年秋には電力生産を開始する予定だ、とした。

イランは核不拡散条約(NPT)に加盟し、すべては国際原子力機関(IAEA)の査察下で行っており、「情報をタイムリーに出さなかったことはあるかも知れないが、是正措置は採られているとIAEAも言っているはずだ」と述べた。

大使はイランの原子力開発について、(1)NPTの遵守(2)軍縮(3)平和利用――が3原則で、NPT上の「義務を履行し、権利を享受したい」と強調。「平和利用に確信を持っている。そのためにはどのようなことも受け入れる。ただ、濃縮の権利を放棄しろと言うことだけは言わないでほしい」と付け加えた。

質疑応答で、大使は米印原子力協定のことについて聞かれ、「二重基準に満ちており、最もNPTを弱体化するものだ」と述べた。また、オバマ米新政権に対しては、「イランに対するアプローチを変えることを期待している。米国は故パーレビ国王を失ったことをいまだに受け入れられないのだ」と語った。

イランは核保有はしないと言っているが、なぜ説得力を持たないのかとの問いに大使は、「イランは核兵器を必要としていない。もし開発すればこの地域の他国が核開発し、地域がより不安定になってしまう。核の使用は一般の人に向かって使われるものであり、イスラムの教えにも反する」と述べた。


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