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[原子力産業新聞] 2009年1月29日 第2463号 <1面>

エネ調にWG設置 今年央に報告書 出力向上ようやく本格化へ

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の原子炉安全小委員会(委員長=班目春樹・東大院教授)は27日の会合で、同小委員会の下に、既設原子炉の出力向上(アップレート)の安全性などを検討する「原子炉熱出力向上ワーキンググループ」の設置を決めた。すでに日本原子力発電が東海第二発電所(BWR、110万kW)の出力向上を今年度中に申請する計画を打ち出しており、米国や欧州では一般化している既設炉の出力向上が、我が国でもようやく本格化することになる。

WGでは、出力向上による原子炉の安全性、設備の健全性、保守・運転管理への影響などを検討する。具体的検討は出来るだけ実機ベースで行うとしており、計画が進んでいるBWR5タイプを対象に、東海第二を代表炉とする。

東海第二は、原子炉熱出力および電気出力を約5%向上させる技術的見通しを得ており、10年度の出力向上運転開始を予定している。

WGの主査は大橋弘忠・東大院教授が務め、臨時委員7名、専門委員2名で構成。来月には初会合を開き、今年半ばを目途に安全性などについて報告書をまとめる。

既設原子力発電所の給水流量計の精度向上やタービン系統の設備改造により、原子炉出力を上げ、電気出力を最大20%程度引上げる対策は、欧米では1970年代から数多く実施され、すでに約160件の実績があるとされる。

我が国では、05年の原子力政策大綱で導入に期待が示され、日本原子力学会は05年度に「原子炉出力向上に関する技術検討評価」特別専門委員会を設置して検討。「設備への影響は設計又は運転段階の適切な対応、管理で対処可能で、安全確保を大前提に積極的な出力向上が望まれる」と提言している。

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原子炉安全小委員会は27日の会合で、新検査制度における定検間隔評価の基本的考え方を検討する「安全評価WG(長期サイクル炉心評価)」、および燃料に関するトピカルレポートの評価方法を検討する「燃料WG(燃料トピカルレポート)」の設置も決めた。

安全評価WGは、定期検査の間隔を決める保安規定の変更認可にあたり、設置許可申請書の基本方針や基本的設計方針に則して、適切な運転期間を評価するための基本的考え方を審議する。代表プラントの長期サイクル運転を踏まえた影響評価を基に検討する方針で、来月には初会合を開催、今年6月を目途に基本的考え方をまとめる。主査は久木田豊・名大院教授が務め、臨時委員4名、専門委員2名で構成。

トピカルレポートは、原子炉設置(変更)許可申請の引用文献となる要素技術を取りまとめた技術文書。燃料WGでは燃料に関するトピカルレポートおよびその評価報告書を審議するが、当面はBWR用燃料の燃料棒熱・機械設計コードに関して検討・評価する。主査は寺井隆幸・東大総合研究機構長が務め、来月には初会合を開く予定。


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