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[原子力産業新聞] 2009年2月12日 第2465号 <3面>

スウェーデン 長期エネルギー政策で 脱原発法撤廃、順次リプレースへ

スウェーデンの中道右派4党による連立政権は5日、1980年に成立した脱原発政策を撤廃し、既存原子炉を順次リプレースしていく方針を盛り込んだ長期エネルギー政策を発表した。地球温暖化防止と長期的に持続可能なエネルギー供給の方策を模索した結果、2005年に積極的な原子力推進に転換した英国や昨年から原子力発電復活に向けて基盤整備を始めたイタリアに続いて、原子力という現実的な選択肢に収束した模様。今後、新規原子炉が社会に及ぼす影響の評価や原子炉の世代交代を可能にするための法整備に向けて、審理を行っていくことになる。

この長期エネルギー政策は、地球温暖化防止と安定したエネルギー供給の確保という目標のために、(1)エコロジーの観点から持続可能(2)競争力がある(3)安定した供給の確保−−という基本方針のもとに打ち出された。化石燃料依存から脱却した低炭素経済実現のため、2020年までに再生可能エネルギーによる供給を大幅に拡大し、温室効果ガスの排出量を40%削減するなどの目標を提示。2050年までには、持続可能で資源効率の良いエネルギー供給構造を獲得し、温室効果ガスの大量排出を実質的に無くすとの構想を掲げており、エネルギー供給源の1つとして原子力を挙げている。原子力に関して記載されている具体的な施策は次の通り。

(1)原子力設備の新設申請を以前のように審査していく(2)新規原子炉を既存の10基という枠内で既存サイトに建設することにより、原子力発電の利用期間を延長する。このため、既存炉10基が技術的経済的な寿命を迎える毎に順次、リプレースを許可する(3)「原子力の段階的廃止法」を取り消し、新規建設の禁止条項を撤廃。原子炉の世代交代を管理する法案作りに向けて審理日程を決める(4)許認可手続きに関連して、新規原子炉建設プロジェクトが社会に与える影響について評価を実施する。「エネルギー供給保証」はそうした評価における拠り所の1つとなる(5)新規原子炉に対する認可は、最も利用可能な発電技術に対する法制上の要求項目に基づいて評価される(6)中央政府は、直接的、間接的を問わず原子力に対して補助金等の支援を行わない(7)原子力損害賠償法を「原子力の分野における第三者責任に関するパリ条約」(および改正議定書)の最新版に適合させる(8)原子炉の共同所有を廃止する。

スウェーデンでは米TMI事故の翌1980年の国民投票の結果を受け、2010年までに原子力発電所を全廃するという方針を国会で決議。1999年にバーセベック1号機、2005年に同2号機を閉鎖した。06年の総選挙で、12年ぶりに社会民主労働党政権から中道右派4党による連合政権に交代。代替電源の見通しが立たないことを背景に、連立政権を構成するキリスト教民主党は07年、「2010年以降の原子炉新設を排除しない」とする環境問題報告書を作成しており、同年3月に政府は全廃の期限を撤回した。また、08年1月には与党自由党が独自の地球温暖化防止政策案の中で、新規原子炉の建設禁止政策撤廃と、少なくとも4基のリプレース炉建設の必要性を訴えるなど、徐々に脱原発政策撤廃の機運が高まっていた。


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