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[原子力産業新聞] 2009年2月26日 第2467号 <3面>

米原子力規制委 新設炉設計で 航空機衝突への耐久性評価を要求

米原子力規制委員会(NRC)は17日、新規原子力発電所の認可申請者に対して、その設計が大型民間航空機の衝突による影響に耐え得る、あるいは緩和する能力を備えたものであるかを評価するよう要求する最終規則を公表した。

NRCのD.クライン委員長によると、これは「9.11事件で提起された課題に対する常識的なアプローチ」であり、新規原子力発電所の申請に対する規制上の枠組みの中で重要な要素となるはずだと強調した。

現在、米国の原子力発電所は、発生する可能性の極めて低い配管破断などの機器異常と同様に、大規模火災や洪水、地震、ハリケーンといった「設計基準事象」に際して、確実に安全停止するよう厳しい要求項目に基づいて設計されている。それらの要求項目には、それぞれの安全機能を果たすために2つの冗長システムを備えていることが含まれるが、今回発表された最終規則では大型民間航空機の衝突は設計基準事象の範囲を超えた「超・設計基準事象」として扱われる。

同規則に準ずるという目的のためにのみ、採用された設計特性や機能としてNRCは、航空機の衝突影響から、@炉心の冷却機能A格納構造の健全性B使用済み燃料の冷却機能C使用済み燃料冷却プールの健全性――を維持することを列挙。ただし、これらは厳しい基準を満たす機能や設計特性ではあっても、冗長システムの規制と同様、NRCの設計基準に基づく規制からは対象外である。

一方、NRCは原子力発電所が大型民間航空機の衝突を回避するための責任は連邦政府に帰すると指摘。そうした脅威に対して多重の防備を施すため、NRCは北米防空総司令部(NORAD)や連邦航空局などの連邦機関と緊密に協力するとともに、このような努力が航空機衝突事象の発生を効果的に防ぐことにつながると期待している。NRCはまた、新たな規則に則って設計された新規原子炉で万一、あまり起こりえない事象が発生した場合、新規則に準じた対策を講じていない同型設計の原子炉よりは高い耐久能力を発揮するはずだと強調している。

NRCはすでに02年、設計基準を超える航空機衝突の影響も含め、火災や爆発の影響を緩和する戦略の採用を事業者に求める指令を出すなど、原発における現実的な脅威に対する安全保障改善に取り組んでいる。


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