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[原子力産業新聞] 2009年3月5日 第2468号 <2面>

【シリーズ】原子力発電「支えの主役 部品、機器、サービス企業編(10) アトックス 総合メンテナンス事業を展開 除染・洗浄等をコア技術に ワンストップサービス提供 ソリューション機能を充実

原子力施設のメンテナンスは、放射線管理をはじめ様々な技術が要求されるが、(株)アトックスは原子力発電、RI取扱施設、核燃料サイクルなど各種施設の総合メンテナンス企業として、業務を展開する。その中核技術は除染・洗浄、切断・解体、廃棄物処理などで、千葉県柏市の技術開発センターでは、現場経験に裏打ちされた独自の技術開発に注力、「装置を使う人と開発する人が一体となって連携協力し、勘所をわきまえた技術開発が当社の特徴」(上田諭・取締役電力事業部長=写真)という。

アトックスは、ビルの設備管理を行う(株)ビル代行が、1980年に原子力部門を分離・独立して設立した(株)原子力代行が前身。これを機にエンジニアリング機能を強化し、93年に現社名に変更した。ATOXには始まりを意味する「A」から、未知の可能性を意味する「X」に挑戦し続ける情熱を織り込んだ。

原子力施設での業務経験は57年の旧原研の実験用原子炉「JRR−1」まで遡るが、本格的な事業拡大は68年の敦賀営業所、70年の福島営業所の開設。現在、全国に約30の営業拠点を有し、多くの原子力施設の近くに拠点を配する。従業員は約1500名(関連会社含め約2000名)で、直近の年間売上高200億円強、電力事業部とRI事業部があり、電力が約80%を占める。

技術の柱は、(1)数々のシステムラインナップを有する「除染・洗浄」(2)デコミショニングに不可欠な「切断・解体」(3)発生量の削減や減容を図る「廃棄物処理」C作業工程の確実性や除染作業の軽量化を図るための「汚染防護」D様々な検査装置や情報処理システムによる「分析・検査」E品質向上、工程短縮、被ばく低減などを実現する「作業性・安全性向上」――など。

中でも最も特徴的な製品は、除染装置。原子炉ウエル・D/Sプール壁面を除染するためのロボットで、除染・洗浄のための回転ブラシ、壁面への吸着機構、水噴出機構などで構成し、SLIM型、SWIG型など用途に応じて様々なタイプがある。「効率的で安全な作業のためには、人と装置が一体となることが重要」(同)で、「当社の社員が実際に現場で経験したことを活かし、技術開発センターが装置を改良・進化させてきた。装置を使う人と開発する人が一体化していることが強み」(同)。

毎年、技術開発年次報告会を開催、技術開発の成果とともに全国の営業拠点から作業効率向上などの報告もあり、昨年は「サプレッションプールストレーナの点検・清掃装置の開発」、「廃止措置工事に係わる切断と除染」、「熱供給センターの蓄熱槽水中ロボット清掃」などの発表があった。

技術開発センターは開設以来、すでに約20年の歴史を有する。原子力施設の安全安定運転、設備の点検・保修、デコミッショニングなどに関する技術開発、環境保全に関する測定・分析・評価など、現場経験に裏打ちされた独自の技術開発を進める。

センター内には110万kW級のBWR原子炉ウエルの平面4分の1(90度分)を実物大で模擬した実験施設、γ線照射設備、RI使用施設などを整備。「今後もソリューションセンターとしての機能を充実し、原子力業界においてワンストップサービスを提供できる企業を目指す」(同)。

除染装置をはじめ同社の装置は定期検査や保修時に使用することが多く、定期検査期間中の特定の日の確実な作業が必要で、装置の信頼性にも特段の注意を払う。

また今後、「長期的に大きな事業に発展するため取組みを強化したい」(同)とするのがデコミショニング技術。すでに商業炉、実験用原子炉、加速器、ウラン濃縮施設など10以上の原子力関連施設の施設廃止で建屋や機器の解体、除染および搬出、廃棄測定、記録などを実施してきており、除染装置の開発などに力を入れていくという。

一方、今後もプラントの新増設、核燃料サイクルの推進、長期運転サイクルの導入への対応など事業体制強化に向けたテーマは多く、人材の育成の強化を打ち出す。ここ数年、幅広い専門分野の学生を30名から40名程度採用してきているが、採用後も職制に応じた研修や専門教育を重ね、自己啓発を促すよう様々な制度を整えている。技術開発センターではインドネシアのインターンシップ学生やJICAの海外研修生の受け入れなども実施し、2年前には2人のフランス人社員も採用した。

「事業の性質上、受け身の姿勢であることが多いが、段階を踏みつつ技術の提供力を強化していく必要がある。技術を伝承しつつ、提供力の強化には若い人材の育成が不可欠」(同)という。


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