「ポスト京都」の枠組み構築 COP15成否のカギ握る日本

ベースロード電源の担い手は「原子力」

司会 では最初に、昨年7月の洞爺湖G8サミット後の地球温暖化防止・エネルギー問題をめぐる議論の流れ・ポイントについて山名先生の視点でお話しください。

山名 洞爺湖サミットおよび同時併催された拡大G8・主要排出国会合(MEM)では、中長期の地球、人類の存続と持続的発展に向けて世界のCO排出量の80%を占める主要諸国がすべて参加し、「2050年COガス排出半減」の長期削減目標の思いを共有しながら、「低炭素社会」実現に向け一致協力する大きな流れを日本主導で構築できた意義は大きい。ただ問題はその具体策にあり、途上国まで含めて本当に「ポスト京都」に向けたCO排出削減の具体的な枠組みを設定できるかは白紙の状態で、先進国間の2020年の中期目標すら合意できておらず、これからまださまざまな国際的議論・綱引きが交錯し複雑さを増していくと思う。日本は現在そういう世界的な流れの中で温暖化対策のイニシアチブをとれる立場にあり、「低炭素社会」実現に向けた具体的行動を示していくことが求められている、というより後に引けない状況にある。

したがって、わが国が率先してどういう具体策を示せるかが今まさに問われていて、日本が「50年半減」の福田ビジョンを実現するには昨年5月の長期エネルギー需給見通しの「30年に一次エネルギーを12%削減するシナリオ(最大導入ケース)」という目標に向けての具体策をどう示せるかだ。特に、エネルギーのかなりの部分は電力で供給することになるため、電力構成をどうするかがポイントで、カギは3つ。第一は再生可能エネルギーをどこまで拡大できるか、第二に原子力にどれだけのウエートを置くか、そして第三は、あまり議論されていないが、それらをミックスするための「エネルギー消費の構造」、電力で言えば負荷変動、つまり、電力の使われ方をどうしたいのか、どうなっていくのかだ。実はそこがまったく白紙の状態で消費電力量だけで議論されていたりするので、極めて非現実的なところがある。

現実に消費エネルギーを下げていくと負荷曲線がこう変わるから、この部分は原子力でカバーするとか、この部分には再生可能エネルギーが入れるとか、再生可能エネルギー発電の不安定さを補償するためのコストアップを全体的にだれかが担っていかなければならないとか、非常に複雑な体系的問題がある。再生可能エネルギーの比率を高めると、その分、火力の設備利用率が落ち電力全体としてコストアップに向かうので、それをカバーするために安くて広いベースロード電源の確保が必要。原子力は設備投資は大きいが燃料費が安いということで、フル能力(稼働率85〜90%台)で運転し続けることでこそ、コストが下がりその特色を生かせる。ベースロードに求められるのはそういう性格のもので、やはり原子力がその役割を担うことになり、負荷平準化が進むことを条件に、多分、発電量シェア49%とか50%を占める基幹電源になっていくと思う。そういう全体像をしっかり積み上げて、省エネ技術普遍化の「セクター別アプローチ」や「エネルギー消費の構造」をきちんと固めてCOP15 に何ができるかを提唱していかないと、「低炭素社会」というのは単なる看板倒れで終わってしまう可能性が高い。そこが一番大事だと思う。


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