原産年次大会「世界不況の影響」確認の場

司会 それでは服部理事長、そういう中で、4月に原産年次大会が横浜で開催されるが注目点は何か。

服部 今年の第42回原産年次大会を立案した段階と現在とでは、諸環境が一変している。最大のポイントは、世界同時不況がここまで大きくかつ急展開するとは誰も予想できなかっただけに、それがどのように影響するのか、世界の皆さんが温暖化対策や原子力への投資を今どう考えているのかを直接聞き、確認できる極めてタイムリーな場になろう。

私は、こういう経済危機で一時的にエネルギー需要が落ち、また石油価格も1年前に比べ大幅に値下がりしていること等から、原子力の「背中を押す力」は若干弱まり、全体的には多少のスローダウンが予想されるが、地球温暖化という現実は厳然として変わらないだけに、長期的な視点からこの問題にどう取り組むかが肝心だと思っている。

原産年次大会の基調テーマは「低炭素社会実現への挑戦――原子力は期待に応えられるか」で、これはまさに世界各国が共通して今、地球温暖化を防止するためCO排出を抑える「低炭素社会」実現への挑戦を受けていると同時に、原子力がその「切り札」としての期待に応えられるかの問題提起であり、非常に意義深いと思っている。

「原子力に対する期待」というのは、山名先生が言われたように「恐らくそこに行き着くであろう」という判断に基づき期待しているのだが、では原子力が本当にその期待に応え、中心的役割を担うことができるのか。これは、タイムスケジュールの観点からも原子力がいつまでももたもたしていて期待感を失うようだと、市場から駆逐されないまでも原子力発電への積極的な投資が行われないことにもなりかねない。それだけに、しっかりと期待される役割を果たしていく必要があると思っている。

そのうえで、今年の年次大会は3つのセッションに分かれ、第一部は、日米仏はじめ経済・原子力大国が今回の金融危機も含めて、どのように原子力を推進しようとしているのか。幸い、原子力界にとってはいいニュースが多く、とりわけスウェーデンのような、ある意味「脱原子力の旗手」として報道されてきた国が、「現実的に考えると原子力しか選択肢がない」と大きく政策転換しようとしている。

また、フランスからの電力輸入に依存してきたイタリアも、エネルギー・セキュリティーあるいは地球温暖化問題を考え「原子力に回帰」しており、英国も同様ながら、この二国の政策転換は非常に大きなインパクトがあると思う。「脱原子力」で残るドイツが今回の年次大会に参加していないのが残念だが、今年9月の総選挙の結果次第で今後の見極めがつくと見ている。

また第二部では、いわゆる途上国も原子力を積極的に導入しようとしている現状を検証する。途上国が新規に導入するには、技術力あるいはファイナンスも含めてさまざまな課題があるだけに、日本が持っている経済力や技術力でどのように貢献できるかの観点から議論したい。

そして第三部では、このように世界全体では原子力に対する期待感が非常に大きいが、残念ながら日本国内ではあまり原子力の順調な進展が見られない。その典型が原子力発電所の稼働率の低迷にあり、私は「宝の持ち腐れ」と表現している。これは、日本は「原子力をやらなければならない・最大限に活用していく」という視点について、立地地域を含め国民全体の十分なサポートが得られていないことが最大の要因だと思う。したがって、第三部では特に原子力以外の人たちがこの状況をどう見ているかをテーマに、パネル討論会を予定している。


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