原産協会 学生アンケート踏まえ 人材育成で基本目標示す

原産協会の「原子力人材育成協議会」(座長=服部拓也・同理事長)は10日、これまでに行った定量的分析結果と、学生に対するアンケート調査などを踏まえ、原子力人材育成の基本的目標を示す報告書をとりまとめた。

同協議会は昨年7月、原子力人材の需要と供給に関する長期的予測を定量的に分析した「人材育成ロードマップ」中間とりまとめを発表した。今回の報告書では、それに加え、各界からのヒアリング、07年度に始まった国の原子力人材育成プログラムに参加した学生へのアンケート調査なども実施した上で、さらに検討を行い、産官学が目指すべき原子力人材育成の目標として、(1)初等中等教育段階におけるエネルギー・環境に対する理解促進(2)原子力界の魅力の伝達(3)産業界のニーズを取り入れた大学教育の実践(4)基盤技術分野での若手研究者の育成(5)国際的に活躍できる人材の育成(6)就職後の人材育成の継続――を掲げた。

具体的取組として、原子力産業界には、エネルギー・環境教育の実施支援等を通じた小中高校生への理解促進活動や、共同研究実施、寄付口座設置、インターンシップなど、大学との連携を求める一方、大学に対しては、他大学、産業界、研究機関等の外部リソースや、原子力人材育成プログラムを積極的に活用して、長期自立型教育研究を実現すべきとしている。

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人材育成プログラムに参加した学生へのアンケート調査で、学生の原子力専攻・非専攻の比率は概ね半々だったが、原子力専攻の学生が「原子力分野を専攻した理由」として、最も高かったのは「原子力分野の研究に関心があった」(55.2%)で、次いで「原子力の理論、技術に関心があるため」(42.6%)、「原子力分野への就職を希望している」(36.6%)となっており、専攻の選択理由として学問への関心が重要な因子と、報告書では分析している。さらに、原子力専攻の学生では、「原子力分野に就職したい気持ちが強まった」とする回答が51%を占めており、専門的知識を習得していく中で、原子力分野への就職希望を強めた学生も少なくないことが示された。

また、非原子力専攻の学生が持つ「原子力専攻のイメージ」で最も多かった回答は、「最先端の研究ができる」(57.9%)で、次いで「学習する内容が難しい」(57.5%)、「就職の選択肢が狭い」(42.5%)、「優秀な学生が多い」(21.6%)などとなっており、非原子力専攻の学生は、原子力を技術的に高度な内容と考えている一方で、他分野への就職が困難という見方があると推察している。

原子力分野への就職希望は、学生全体で、「原子力分野への就職を希望」が49%、「決まっていない」が30%、「希望していない」が21%で、原子力専攻の学生に限ると、「原子力分野への就職を希望」が72%、「決まっていない」が18%、「希望していない」が10%で、さらに、就職希望先では、電力会社が34.7%と、最も高くなっている。また、原子力分野への就職を希望している学生の希望理由で、最も多かったのは、「社会に貢献できる」(56.6%)で、次いで、「原子力の理論、技術に関心がある/原子力技術を探求したい」(46.2%)、「専門知識を活かせる」(43.1%)などとなっている。

また、原子力への進学、就職を増加させる方策については、「高校の授業で原子力やエネルギーについての教育を充実させる」(55.2%)、「小学校および中学校の授業で原子力やエネルギーについての教育を充実させる」(51.3%)、「原子力産業界が広報活動を充実させる」(42.7%)が回答の上位を占め、学生たちからは、特に初等中等教育の段階が重要との見方が示された。


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