【第42回原産年次大会】 開会セッション 基調テーマ「低炭素社会実現への挑戦──原子力は期待に応えられるか」 特別講演 斉藤鉄夫・環境大臣 「低炭素社会実現への挑戦〜原子力への期待」 原子力発電で実現へ 低炭素社会 省として推進支持

最近50年間において気温上昇ペースは過去100年間のほぼ2倍となっており、20世紀後半の北半球の平均気温は過去1300年間の中で最も暖かかった可能性が高い。氷河は後退し、世界各地で大雨、干ばつ、熱波などの異常気象が発生している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告でも、「地球が温暖化していることは疑う余地がない」としている。

また南極の氷を調べると、大気中のCOは数千年間280ppmで安定していたことがわかるが、現在は380ppmで、さらに年1.9ppm増えている。450ppm以上となった場合は2度以上気温が上がって地球が壊滅してしまうとされている。

自然のCO吸収量が31億炭素トン/年であるのに対し、人為的な排出量は72億炭素トン/年と倍以上であり、少なくとも自然が吸収できるレベルにまで落とさなければならない。

こうした環境への影響を鑑み、世界全体で温室効果ガスの排出量を今後10年から20年のうちにピークアウトし、2050年までには少なくとも半減していくことをG8で承認した。今後、世界中の合意を取り付けていきたい。

世界全体で排出量半減をめざすなら、今後経済発展していく国のことを考え、先進国である日本はより高い目標で取り組まなければならない。京都議定書の2012年までにマイナス6%削減目標をクリアすることはもちろん、2050年までに60〜80%削減していく。

しかし実際には、2007年度における日本の温室効果ガス排出量は基準年(1990年)比8.7%上回っている。つまり議定書の6%削減約束を達成するには、森林吸収源対策の3.8%削減と京都メカニズムの1.6%削減を差し引いても9.3%の排出削減が必要となる。このうち原子力発電所利用率が84.2%と仮定した場合には、排出削減必要量は4.3%となる。

平成20年7月29日に閣議決定した低炭素社会づくり行動計画においても2050年までに60〜80%削減を目標としており、2009年のしかるべき時期に国別総量目標(中期目標)を発表する。原子力発電の稼働率向上・新規建設の着実な実現に関しても明記しており、これも喫緊の課題である。

原子力発電は、発電に伴ってCOを発生させないことから、地球温暖化対策に大きく貢献する。例えば、平均的な火力発電所を135万kWの原子力発電所1基に置き換えるとすると、年間約600万トンのCO削減が可能となる。これは1990年における日本のCO排出量の0.5%に相当する。

先日、現職の環境大臣として初めて柏崎刈羽原子力発電所を訪問し、復旧状況を視察してきた。私自身、先日、原子力学会に30年在籍したことで永年会員賞を受賞した。

これまで環境省は原子力に対して冷たいとの印象を持たれていたかもしれないが、少なくとも私の任期中はそうではない。

低炭素社会実現へ向け、安全確保と地元の理解が大前提だが、原子力発電を進めていくことが非常に重要である。


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