【第42回原産年次大会】 開会セッション 基調テーマ「低炭素社会実現への挑戦──原子力は期待に応えられるか」 シャロン・スクワッソーニ・カーネギー国際平和財団(CEIP)上級研究員 機微技術拡散のリスク低減を

化石燃料価格の高騰、エネルギー安全保障、気候変動の緩和についての懸念により、原子力に対する興味が世界中で高まってきた。新たな原子力発電が特にアジアなど世界のいくつかの地域で増大するであろうが、気候変動と闘うための大規模増加、つまり容量が3倍か4倍になるには、今世紀半ばを待たねばならないであろう。これは今後20年間で必要なCO削減には、はるかに遅い。原子力発電によるCO削減量より、再生可能エネルギーの方が削減効果が大きいとの試算もある。

原子力ルネサンスは、原子炉の数が増加する以外の意味も持つ。原子力発電を持たない25か国以上が導入を考えており、そのうちのいくつかはセキュリティと管理の懸念が考えられる。原子力先進国では再処理といった新たな技術が追求され、大幅な増大はウラン濃縮および使用済み燃料の再処理といった燃料サイクル施設の増大を必要とする。

経済性、安全性、廃棄物、セキュリティ、核拡散といった原子力が従来から直面している課題は依然存在しており、原子力増大には安全性とセキュリティの確保の課題に取り組まなくてはならない。これらは新規導入国にとっては特に関連する課題だが、結局のところ全ての国の安全性とセキュリティに影響を与える。さらに、原子力産業界は現在の限られた能力と労働力を今後数十年に増大する必要が出てくる。金融危機は電力需要を抑える役割を果たすだろう。

新規導入国では、安全文化およびセキュリティ文化の発達には時間がかかり、規制の独立の重要性を軽視してはならない。

同時に、ウラン濃縮や使用済み燃料の再処理といった機微原子力技術の拡散に対する懸念により、二国間協定に含まれる自主的でその場しのぎの対策に頼るのでは十分ではない。その代わり、核分裂物質管理条約の下で濃縮と再処理の能力を段階的に廃止することが望ましく、必要であろう。これは機微技術を含む燃料サイクル施設の建設で、国家の威信を高めようとする動きから、原子力の機微技術を分離させることができる。


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