【第42回原産年次大会】 セッション1 基調テーマ「原子力大国・経済大国における低炭素社会実現にむけた原子力発電への期待」 S.バルドワジ・インド原子力発電公社理事 「成長を続けるインド経済におけるエネルギー政策と原子力発電」

11億5000万人という人口を抱えるインドの主要な政策課題は、まず貧困の軽減であり、雇用や水と食糧の供給、医療保険、教育など様々だが、人口の45%が享受できていない「クリーンな燃料と電力へのアクセス」もまた、急速な経済成長の維持には欠かせない。

エネルギー供給政策のポイントは、(1)エネルギーの質(2)安定供給(3)持続可能性であるが、(3)の中には量の豊富さや安全性と信頼性、環境への影響が最小であることも条件に含まれる。現在、インドの一次エネルギー供給量542MTOEのうち、原子力の供給割合は1.5%。現在の経済成長率8%で計算した場合、2032年には778GWの設備が必要で、これに対処できる答えは原子力以外にない。

インドではすでに17基の原子炉が稼働中だが、送電網の不備もあり大型炉の導入が遅れた。国内にはトリウムが豊富に産出することから、原子力開発計画の基本政策は次の3段階の手順で進める計画。まず、(1)インドで採れたウランをPHWRで燃焼し1000万kW程度の電力を得る(2)その使用済み燃料を再処理して得られたプルトニウムと劣化ウランを、インドで豊富なトリウムとともに高速増殖炉(FBR)で燃焼。(この段階で得られる電力は3億kWを予測)インドでは現在、出力50万kWのFBRを建設中で、2011年に完成する予定だ(3)トリウムが燃焼して生成されたウラン233を核燃料とし、増殖炉でリサイクルするシステムを構築する。この段階の発電量は膨大と考えられ、数百年間インドの需要を賄っていける計算。

さしあたり2032年までのシナリオでは軽水炉を増やしていくことが課題で、日本を含めた海外のサプライ・チェーンには支援を期待している。


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