がん細胞のDNA切断に成功 レーザー駆動陽子線照射での治療に道

日本原子力研究開発機構、大阪大学、兵庫県立粒子線医療センター、電力中央研究所、日本アドバンストテクノロジー社、日本科学社の共同グループは、レーザー駆動陽子線を生きた生物細胞に照射する装置を世界で初めて開発した。

この装置を使用してヒトの肺腺がん細胞に照射したところ、DNA2本鎖切断に成功し、有効性が実証された。このことにより、レーザー駆動陽子線には、従来の加速器による陽子線同様、がん治療効果があることが確認された。この成果は米国物理学会出版の論文誌「アプライド・フィジックス・レターズ」18号94巻に掲載されると同時に、表紙も飾った。

粒子線がん治療は、放射線量を治療対象部位のみに選択的に照射するため、がん患部以外への影響が少ない治療法として近年注目されている。しかし、大型粒子線加速機の高額なコストが問題となっており、レーザー駆動粒子線加速の原理を利用した小型の加速器が待たれていた。

本研究では、従来、技術的に困難とされてきた粒子線を安定供給するためのターゲットや粒子線を選別する技術、生きた状態の細胞に真空中で粒子線を照射する手法などの開発に成功し、レーザー駆動粒子体が体内のがん細胞と衝突する状態を再現できる実験装置を開発した。この装置を使い生物的効果の基礎データを網羅的に収集することで、レーザー駆動陽子線の治療効果や適応疾患の確立をめざす。

本研究は、文部科学省科学技術振興調整費先端融合領域イノベーション創出拠点の形成「光医療産業バレー拠点創出」の一環として実施され、特別教育研究経費・連携融合研究の助成も受けた。


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