麻生首相 温暖化ガス削減で決断 政府中期目標15%減 「原子力開発に全力」

麻生太郎首相は10日、2020年までの日本の温室効果ガス排出量削減の中期目標を「05年比15%減」(京都議定書の基準年90年比8%減)と決め、記者会見し発表した。主要排出国の全員参加と日本のリーダーシップ発揮をめざし、環境と経済を両立させつつ、原子力開発に全力をあげて取り組み、長期目標を実現させることを目指す。

政府の「中期目標検討委員会」(座長=福井俊彦・ 前日本銀行総裁)が取りまとめた温暖化ガス排出の中期目標の6つの選択肢(05年比マイナス4%〜同30%)のうち、太陽光発電やエコカー購入など最高効率の機器を現実的な範囲で最大限導入する「最大導入ケース」のマイナス14%に、首相はさらに1%を削減上乗せするマイナス15%を選択した。

同首相は6つの選択肢のうち、「14%削減から太陽光などの大胆な上乗せなどによって、さらに削減幅を大きくするものだ」と説明し、「オイルショックのときのエネルギー効率の改善30%を上回る33%の改善を目指す極めて野心的なもの」と強調した。

また麻生首相は、日本の中期目標が欧州の13%減、米国の14%減の目標を上回るだけでなく、欧米とは異なり排出権購入や森林吸収分(京都議定書では計5.4%分)を含まない「真水の目標」であることを指摘。一方で、京都議定書後の新たな国際枠組みの中では、「これらの扱いをどうするかは、今後の国際交渉を見極めた上で判断したい」との方針を明らかにした。

同首相はさらに、長期目標の達成について、「2050年に60%から80%削減に向けて直線的な経路を歩むことは困難だ」と述べた上で、「革新技術や原子力の開発や普及に全力を挙げていく」との決意を語った。

首相は、「今や世界の人材、技術、資金がクリーンテクノロジーをめがけて奔流している。ここで手をこまねいてしまえば、日本はエネルギー効率の優位性を失い、次の世代に経済競争力のない、国際競争力のない日本を引き渡すことになるだろう」と警鐘を鳴らした。

記者の「現状では京都議定書の削減目標もなかなか達成が難しい」との指摘について、「目標がなかなか達成できない数字になっている大きな理由は、やはり地震で、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所等が止まったのが一番大きく数字を変えた」と語り、原子力発電によるCO削減効果の大きさを再認識した。

森詳介・電気事業連合会会長コメント わが国にとって大変に厳しい水準であり、今後十数年にわたって国民や企業の活動に影響を及ぼすことになる重い決断であると受け止めている。今後の国際交渉に当たっては、すべての主要排出国の参加やこれまでの省エネルギー努力を加味した国際公平性の確保を前提に毅然たる態度で臨んでいただきたい。電気事業者は引き続き、原子力を中心とする非化石エネルギー比率50%をめざし、業界を挙げて電力の低炭素化に努めていく。


お問い合わせは、情報・コミュニケーション部(03-6812-7103)まで