【Fresh Power Persons − 座談会編 −】 「低炭素革命」リーダー国の条件 「日米主導構造」の検証と原子力


再生可能エネ・省エネの最大限利用策を

司会 藤野さんには、再生可能エネルギー、省エネについて聞きたい。

藤野 私が今注目しているのは、スマートグリッドのような新しいエネルギー需給のコントロールシステムで、供給側だけでなく需要側のデータをしっかりと集め、それに合わせてうまく供給していくシステムだ。近く、米国のニューメキシコ州アルバカーキへ、日本企業が一団となってスマートグリッドの現地実験に行く。どうしてわざわざ米国に行くかというと、米国では実際にある需要家を対象にして、日本の得意なIT技術などを応用しながら、それに太陽光や風力のような不安定なエネルギーをミックスしても、うまく制御することで再生可能エネルギーの価値を最大限に利用できる方法がないかトライすることができるからだ。そして、需要側のコントロールもかなり可能になるかもしれない。

それには、やはり省エネが一番大事だ。人々が必要とするサービスを提供するのは大前提だが、例えば窓の仕組みを改善することにより、あまり明かりを使わなくても十分明るい家をつくれる。特に、アジアで言われたのが、「オリエンタル・ウィズダム」のような文明論に近い概念だ。彼らは、現在の経済パターンにいかに新技術を適用していったとしても本当に持続可能な社会経済が実現できるのかという疑問を持っており、それに対して「もったいない」や知足経済のような考え方が大事だと指摘している。必要なサービスは提供しながらも、最新の技術を使うことでできるだけ無駄の少ないシステムを築くことが肝心だと思う。

司会 日本は省エネ技術で途上国のCO排出削減に協力・貢献するだけではなく、ビジネスにもつながるのか。

藤野 もちろんつながる。むしろそこを急がないといけない。現在、中国型イノベーションがどんどん進展していて、日本より若干効率は悪いが、価格が半額とか3分の1とか比較にならないほど安いものが市場に出てきている。すでにハイブリッド車も3種類生産しており、秋には4種目が市場に出るらしく、まあまあな性能で値段は安いと聞いている。そうしたイノベーションが起こっていくと、今は日本がハイブリッド車で世界市場を席巻しているが、それとて安閑としていられない。日本の研究開発は今、どこに戦略的ポイントを置くかが絞りきれておらず、研究開発投資も“ばらまき”に近い気がする。政府としては “集中と選択”を標榜し、問題意識をもって検討しているようだが、具体的な低炭素社会の姿を想定して、バックキャスティング的に戦略を練っているようには思えない。


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