【Salon】研究とセレンディピティー ノーベル化学賞受賞 白川 英樹 氏

「研究とセレンディピティー」

ノーベル賞の栄誉は、いかにして得られるか。人並みはずれた才能と努力と……『幸運』。

「導電性ポリマーの発見と開発」で2000年にノーベル化学賞を受賞したこの人は、『幸運』をいかに迎え入れるかを、原子力システム研究懇話会の総会特別講演で、「セレンディピティー」という言葉で説明した。

この言葉は、1754年1月に英国作家H.ウォルポールが友人に宛てた手紙の中で初めて使った彼の造語。ペルシャのおとぎ話「セレンディップ(現在のスリランカ)の3人の王子」の中に出てくる、主人公の王子たちが求めていなかったものを、偶然や賢明さによって見つけ出す能力の意味を表すものだ。

氏のノーベル化学賞の業績の発端は、「通常よりも1000倍濃い触媒を使ってしまった!」ことだと氏自身も言う。そのころ東京工業大学の研究者だった氏は、材料改質に放射線重合を研究していた当時の東大原子力工学科の田畑米穂教授(現在のシステム懇運営委員長)とも交流があったことも懐かしそうに語った。

「目的を遂行する中で起こった偶然がきっかけで、目的以上に素晴らしい発明や発見をする能力」、「偶然から思っても見なかったものをうまく見つけ出す能力」、「偶然と賢明さにより、予期しないことを発見する能力」――だが、「チャンスは、待ち構えた知性の持ち主だけに好意を示す」とも言われることを紹介。

それでは、「セレンディピティー」は学ぶことができるのかという設問に氏は、「常識や決まった手順を改めて疑ってみる」、「創造性を育てることの大部分が、童心を育み維持させること」を通じて、「何事にも興味をもち、探求に意欲を燃やせる人間は、創造性に富み、予期しなくともセレンディピティーを発揮できると確信する」と、静かに、しかし力強く結んだ。棚からぼた餅なんて落ちてくるはずはないと思っていても、ついつい期待してしまう凡人の筆者は、氏の名刺はもらっても爪の垢をもらうことはついぞ失念した。(き)


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