イタリア議会で 原子力への復帰法案が可決

イタリアのC.スカヨラ経済発展相は9日、イタリアに原子力発電復活への道筋を開く法案が上院で承認され、議会として正式に可決したことを自身のウェブ・サイト上で発表した。イタリアはチェルノブイリ事故翌年(1987年)の国民投票で脱原子力政策を採択して以来、国内ですでに閉鎖していた1基に続き、稼働中だった原子炉3基をすべて閉鎖するなど徹底した脱原子力政策を遂行したが、EU内で3番目に高い電気料金や、世界最大の化石燃料輸入率などに対処するため、原子炉全廃後、約20年を経てついに正式に原子力ルネッサンスを迎えることになった。

今回承認された法案は、原子力などエネルギー分野の措置も含めてイタリア全体での経済改革や企業の発展、競争力の強化を図る目的で昨年8月に政府が提出していたもの。「原子力発電への復帰」と題した部分では、政府が6か月以内に新たな原子力発電所建設候補地を選定するほか、放射性廃棄物の管理基準や建設計画で影響を受ける住民への補償方法を策定することが明記された。

原子力復活による利点としては特に、電気料金の軽減と、温室効果ガスの排出削減を通じて地球温暖化防止のための国際的な数値目標達成を挙げている。また、専門家や技術者などで構成される原子力規制当局を創設し、緊急時対策や周辺住民および従業員の安全対策、環境防護に責任を負わせるとともに、年に1回議会への報告を義務付けるとしている。

昨年5月に発足した第3次ベルルスコーニ政権は、選挙公約としていた原子力の復活を実行に移すために着々と政策を推進。すでに今年2月、イタリア電力公社(ENEL)が仏電力(EDF)と協力協定を結び、国内に少なくとも4基の欧州加圧水型炉(EPR)を建設するための実行可能性調査(FS)を実施することになっている。

スカヨラ経済発展相の見通しでは、2013年にも最初の原子炉の基礎掘削を開始し、その5年後を目処に運転を開始したい考え。ただし、課題も山積しており、地元紙によると法案成立に反対していた環境派政党議員らは受入れ自治体探しの難しさを指摘したほか、「4基の建設費用は200億〜250億ユーロと見積もられ、経済的にも環境的にも暴挙だ」と述べたと伝えられている。

今回の原子力関係法案可決でイタリアが脱原子力政策に終止符を打ったことについて、欧州の原子力産業界の連合体である欧州原子力産業会議(FORATOM)は、「歴史的な決断だ」と高く評価。欧州全域での原子力復活が一層強力な推進力を持って継続し、さらに多くの国々が「原子力の支持」こそが今や抑え難い風潮であると認識していくことになると指摘した。


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