現実路線で日本に学ぶこと多い

INC2009の開会では、韓国との原子力協力協議のため急遽ソウル訪問のマクシマス科学技術改革省大臣に代わってファディラ副大臣が挨拶に立ち、以下のように述べた。

▽油田の枯渇化により、マレーシアは2011年から2013年の間には石油純輸入国になる見通しであり、天然ガスも先細り傾向にある。石炭はすでにほぼ全量輸入している。

▽新エネルギーは経済性や規模で在来燃料源には勝てない。

▽原子力発電こそ、マレーシアの2020年以降の社会・経済開発を支える実証された現実的なエネルギー源である。

▽しかし原子力発電計画の企画・準備には10〜15年かかることも認識しなければならない。

▽マレーシアは中小型炉に関心がある。日本では小型のJPDR(1.3万kW)から始めて、いまや130万kW級炉まで造り53基で総発電量の30%を供給している。マレーシアはこういう現実的な路線をとるべきで、日本から学ぶことが多い。また日本から多くの協力を受けていることに感謝している。

▽マレーシアは、新興国への原子力発電導入に際して、日本が提唱する3S(核不拡散、安全、セキュリティ)の原則を強く支持する。

同副大臣は、開会直後の記者会見でも、これらの発言を再度強調した。

INC2009の開会セッションでは、日本の町末男・元原子力委員会委員が「低炭素社会に向けての日本のエネルギー政策/原子力発電の役割」という基調講演を行った。最終日には、日本原子力発電広報室調査役の小川順子氏(WINジャパン代表)が「原子力発電産業の新時代の女性」を発表し、「原子力エネルギーでのパートナーシップの強化」のパネリストともなった。

日本原子力研究開発機構(JAEA)大洗研究開発センター照射試験開発課の石塚悦男課長が「軽水炉の経年劣化管理研究のためのJMTRの再生」という講演を行った。筆者も「原子力発電導入のためのアプローチ/原産協会からマレーシアへの提案」という講演を行った。

展示会の一角にポスター掲示コーナーがあったが、そこではイラン人の発表ポスター(A0判の大きさで2枚)も掲示され、イランが開発している「ノズル法」の濃縮技術が紹介されていた。原子力平和利用の権利を主張するためと思われた。

【参考】 なおマレーシア滞在中、New Straits Times紙には、原子力関係で以下のような報道がなされた。参考までに記す。

▽6月30日付 科学技術改革省とエネルギー・グリーンテクノロジー・水省が、原子力発電に関する共同ペーパーを閣議に提出した。

▽6月30日付 電力公社(TNB)のカリブ・モハマド総裁がクアンタン市での講演の中で、「マレーシアの天然ガスは2019年までに枯渇する。ソーラーや他の代替電源は大量発電では高すぎる。政府は発電の60%をガスに依存していることを深刻に受け止め、原子力発電への転換を図るべきだ」と述べた。

▽7月1日付 パリ訪問中のムフィディン副首相(兼教育大臣)にエリーゼ宮の官房長官兼サルコジ大統領上級アドバイザーから、フランスはマレーシアに原子力発電協力の用意があるとの提案があった。また、仏側からフランス語教育の支援協力などの申し出も。


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