英政府 核不拡散強化で戦略 民生利用促進で拠点の創設提唱

英国のG.ブラウン首相(=写真)は16日、来年5月に核不拡散条約(NPT)のレビュー会議がニューヨークで開催されるのに先立ち、21世紀の核問題に対する英国の取組み戦略を示した「2010年への道」を公表し、世界で民生用原子力導入に広く道が開かれるよう「原子力研究中核拠点」を英国に設置することなどを提唱した。

ブラウン首相は、核不拡散と安全な民生用原子力利用の促進にあたり、英国が主要な役割を果たしていくと断言しており、「2010年への道」とともに核不拡散問題に関する声明も公表。地球温暖化や世界レベルの貧困、エネルギー不足に取組む上で原子力は大きな役割を担うとの観点から、今回の戦略策定の目的は核物質の防護や核兵器拡散に対する緊急の行動計画、核兵器の無い世界の樹立に必要なパートナーシップの育成などで適切な条件整備していくことであると強調した。

具体的な方策として同首相が挙げたのは、まず第一に「原子力研究中核拠点」を英国に創設し、すべての国が原子力を平和利用する権利を現実のものとし、民生用の原子力利用を世界全体で促進していくこと。同拠点では、テロリストや敵対的意思を持つ国家による原子力の核兵器への転用が難しくなるよう、コスト効率や核拡散抵抗性の高い燃料サイクルなどの民生用原子力技術を開発する。同拠点の設立のために英国政府は産官学および諸外国と連携し、最初の5年間に2000万ポンドの予算を計上するとしている。

もう1つの方策は、原子力安全保障とテロ対策のさらなる強化。英国はこのための支援を必要とするいかなる国の要請にも応じると同首相は強調しており、来年の原子力科学検査予算に300万ポンド増額。原子力安全保障を核不拡散の枠組みの新たな柱とするため、国際的なコンセンサスを確立したいとしている。

民生用原子力利用の安全な拡大方策として、首相はこのほか、プルトニウムの長期管理体制を整備するための手続きを開始すると明言。差し当たり、秋までに同手続きと政策決定のタイミングについて議論した文書を二度にわたり公開する予定だ。

また、燃料供給保証制度に関する英国案を早急に固め、9月の国際原子力機関(IAEA)総会で提案する計画だと強調した。新たに原子力の導入を希望する国に対して、核不拡散義務の遵守と引き換えに燃料供給を保証するIAEA主導のシステムに参画したいとの意向を表明している。


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