加ノルディオン社 RI供給問題で メープル炉計画の復活を要請

医療用アイソトープ(RI)生産炉であるNRU炉の運転再開が年末になるとしたカナダ原子力公社(AECL)の8日付けの発表を受け、RI販売業者のMDSノルディオン社は同日、カナダ政府とAECLは代替計画だったメープル(MAPLE)炉を完成させることにより、RIの生産不足に取り組むべきだとの見解を発表した。

NRU炉はテクネチウム造影剤の原料となるモリブデンを含め、世界の医療用RI需要の約半分を生産しているが、運転開始後すでに52年が経過。ノルディオン社は、世界需要の3割を供給するオランダ・ペッテン炉の運転状況に触れ、同炉も今月中旬から約4週間の計画停止に入り、来年初頭まで修理のため停止予定である点に言及した。

世界のRI供給の脆弱性を克服するという観点から、同社は「NRU炉に替わってMAPLE炉を操業するという長年の誓約を果たすよう、カナダ政府からAECLに指示することが重要だ」と断言。MAPLE炉施設によって、カナダは革新的で重要性を増しつつある核医学分野においてリーダーシップを維持できるとの見解を表明している。

同社はまた、「政府はMAPLE原子炉を操業できない理由について様々な議論を提示したが、多くの組織や専門家は政府とは反対の意見を表明している」と指摘。同社は、国際的な専門家連合の支援やすでに存在するインフラ等により、MAPLE炉は安全に稼働することが可能で、同炉のいかなる技術的な課題も克服できると考えていることを強調した。

熱出力・各1万kWのRI生産炉をチョークリバーに2基建設するというMAPLE炉計画は、1996年にノルディオン社とAECLの協定により開発が始まった。しかし、反応度係数など設計上の問題により、2005年になっても同計画は完了せず、投資総額も当初計画の2倍近い3億5000万ドルに増大。06年の協定により、ノルディオン社はMAPLE炉の建設費用ごと所有権をAECLに引き渡し、同炉が08年に運開して以降、同炉の生産するRIは約40年間に渡ってノルディオンに供給されることが決まっていた。

それにも拘らず、カナダ政府とAECLは昨年5月、ノルディオン社への事前連絡なしにMAPLE炉計画の中止を発表。NRU炉の運転認可切れ後は、認可の延長でRI需要に対応するとの見解を示していた。

なおノルディオン社はこのほか、MAPLE炉計画以外の代替案として、ロシアのカルポフ物理化学研究所におけるモリブデン99(Mo99)生産の実行可能性調査で6月15日に同研究所と合意に達したと表明。さらに、カナダ国内のTRIUMF国立研究所ともMo99の生産可能性調査で4月に合意していたことを明らかにしている。


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