DOEとUSECが合意 米国遠心分離工場の建設で 融資保証の申請審査を延期

米エネルギー省(DOE)は4日、米国濃縮会社(USEC)が米国遠心分離プラント(ACP)の建設計画で申請していた連邦政府の融資保証について、同計画の財政的および技術的な課題がある程度解決するまで、申請の最終審査を延期することで両者が合意に達したと発表した。

USECは2007年5月にオハイオ州パイクトンでACPの建設を開始。2012年までに年間3800トンSWUの生産能力達成を目指しているが、諸経費高騰の折から昨年9月に連邦政府の融資保証プログラムに適用を申請。核燃料サイクル事業に割り当てられた20億ドルの融資保証を政府に求めていた。

ところがDOEは7月27日、USECに対して融資保証申請を取り下げるとともに、一層長期的な研究に努力を傾注するよう要請。その際、見返りとして今後18か月間にわたって4500万ドルの研究費を提案した。

USECのJ.ウェルチ社長は29日にB.オバマ大統領に書簡を送り、同大統領が昨年の選挙期間中にオハイオ州知事に対して、同計画への融資保証の適用支援を約束していた点に言及。それ以降、USECは独自にACPに5億ドルを投資し、累積投資額は15億ドルに達したが、これは融資保証枠の適用支援という約束が果たされるとの期待の下で行った。現在のような不確実性の高い状況では、同社は建設プロジェクトの解散手続きと、2000名近い契約雇用者のレイオフを開始せざるを得ないとし、28日付けでその手続きを開始したと警告するとともに、ACPへの融資保証適用を強く要請した。

同社はまた、ACPの技術はまだ準備段階だとするDOEの見解に疑問を表明。「DOEの遠心機による10年もの経験を元に、遠心機で23万5000時間以上の延べ稼働時間を達成し、商業運転に移行できるだけのデータと専門的知見を蓄積した」と主張していた。

今回の合意内容として、DOEはACP計画特有の技術的な課題や追加的な財政措置計画が融資保証の規定要件を満たすまでUSECの申請審査を遅らせることとし、ACPの技術について特定された問題に関しては、独立の立場のエンジニアが有益な助言を提供するため、短期間のうちに報告書を完成させることとしている。両者はまた、USECの申請が融資保証の規定要件をすべてクリアするまでに少なくとも6か月かかるとの認識で一致したとしている。

〈DOEの発表〉

DOEは、7月28日付けの発表の中で申請の取り下げを働きかけたことを認めている。DOEはUSECの技術を次世代の濃縮技術として有望視する一方、技術的、財政的な審査の結果、まだ商業規模の操業に移行する準備ができておらず、融資保証の規定要件を満たしていないと指摘。DOEの考えでは、申請の取り下げによってUSECは、ACPが直面する技術的な問題の解決のため、今後12〜18か月にわたって研究開発と試験の継続が可能になり、将来、再び申請を行う際、承認チャンスを確実なものにすることができる。その間の研究開発費として4500万ドルを融通すると提案したもの。

DOEは特に、S.チュー長官の発言として、「採用技術が商業規模で展開可能なことを実証するため、USECにはさらなる技術開発期間が必要だが、これを財政的な課題と共にクリアすれば、今後再び申請を出すことが可能だ」とした点を強調。DOEとしては当面、地元に良質な雇用を800〜1000名分生み出せるよう、年間1億5000万〜2億ドルの投資を4年間継続し、ポーツマス・サイトで冷戦時代の汚染浄化作業を優先するとしていた。


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