関原懇がセミナー 小中学校の放射線教育の現状 「米国との差、まだ大きい」

関西原子力懇談会は8月、大阪市内で第4回「放射線教育セミナー」を開催し、日本理科教育支援センターの小森栄治・理科教育コンサルタント(元中学校理科教諭)が「新学習指導要領に基づく放射線教育のあり方」と題して講演した(=写真)。教育関係者約50名が参加し、後半は模擬授業のような形式で、「指導案」が紹介された。以下、その概要を掲載する。

現在の日米の理科の教科書を比較すると、アメリカの小学5年生の教科書に「複数の原子モデル」「周期表」「放射線、アイソトープ」が載っている。日本とアメリカではかなり違う状況となっており、日本も中学でアメリカの小学5年生のレベルまで上げたい。

今回の指導要領改訂により、中学3年の理科の授業時間が80時間から140時間へと増加するが、放射線については中学3年後半(2学期または3学期)の扱いとなるため、実際の授業時間は2時間程度になるものと思われる。

また、将来、科学に関連する職業に就きたいと希望する子供は全体の2割程度しかいないため、「実生活や社会との関連」「職業とのかかわり」についても理解できるように、科学者、技術者の紹介や科学技術による恩恵などにもふれるべきだ。

理解を深めていくためには「観察実験」が大切であるし、リスク評価、メディア・リテラシー(理解力)の力をつけることも重要だ。特に放射線の安全性は程度の問題(線量に関係)なので、数値をきちんと教えることや、インターネットや本などから得る情報が「正しいのかどうか」という情報源に対する見極めをはじめ、メリット、デメリットを比較考査し、自分たちで意思決定ができる子供たちの育成が大切だ。

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講演後の意見交換では、参加者の先生方から「具体的なエピソードを記載した事例集がほしい」、「観察実験器具を普及させていくことが大切」、「現場の教師は研修が多く忙しい、教材作りの時間がない」、「教員どうしのコミュニケーションが減っている」などの意見が出された。

小森氏の講演後、簡単に「近畿大学における原子力・放射線教育の紹介」、「京都大学院生による中学校理科新学習指導要領に沿った放射線教育の実践報告」も行われた。


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