天野IAEA次期事務局長 熾烈な選挙戦を講演

福井大学、福井県経団連、福井県環境・エネルギー懇話会は1日、福井市の福井商工会議所で、12月に国際原子力機関(IAEA)事務局長に就任する天野之弥氏を招き、講演会を開催。天野氏は、「IAEA事務局長選挙とIAEAの課題」と題して講演を行った。会場には学生から報道関係者まで、約480名の聴衆が詰めかけた。

天野氏は、「IAEAは『核の番人・番犬』とも呼ばれているが、実際は『原子力の助っ人』の性格の方が近い」と指摘。150の加盟国、約500億円の予算で運営されているIAEAは「国連に次いで重要な国際機関」だと述べた。

IAEA事務局長選挙を振り返って同氏は、「数ある国際機関の事務局長選挙の中で最も難しいもの」とし、その理由として、35理事国の3分の2以上の24か国以上の支持を得なければ当選できないが、理事国の構成が先進国16か国、途上国19か国であり、両グループの支持を得る必要があることを指摘。

選挙の事前運動について天野氏は、「全理事国の35か国を回るのでさえ、大変な作業」として、ボリビアで高山病になりかけた経験などを披露。一方で、選挙戦での大きな誤算は「南アフリカのミンティ氏が立候補したこと」だとし、反アパルトヘイトの闘士として有名な同氏は、票を伸ばすことはなかったが、12票を取り、他候補をブロックしていたと述べた。

2回目の投票には、欧州からさらに3人が立候補。7月2日の2回目投票の第2ラウンドでは天野・ミンティ間で決選投票となり、棄権が1票出たため、天野氏に決まった。

天野氏は、IAEAは原子力技術を使って、グローバル・イシューの解決に取り組むことが任務だとし、事務局長就任後は、日本の代表としてではなく、一個人として、公平・公正に仕事に取り組み、国際社会の信頼を得たいとした。また日本人として、広島・長崎の経験をもとに、核兵器に反対する気持ちをもとに、力一杯活動したいと抱負を述べた。


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